通常文
□姫の機嫌を損ねるな
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「……………茶でも入れるか?…コーヒー?」
「……………お構いなく」
「…」
不自然に上擦る男たちの会話を腕を組み訝しげにジロリと見つめる少女。
ふたりの男は今、人生最大の危機を迎えている。
偶然市中で非番の土方に鉢合わせ、久しぶりだったこともあり口車でなんやかんやと煙にまいて自宅に連れ込み(着いてくるのは了承の印のはずだ)まあいわゆるそーいうコトを致そうとしていた。
寸前でよかった。
イヤよくねェよ。
ソファの上で更に土方の上に乗り上げ、正にその唇をいただこうという瞬間。
「……何してるアルか」
思春期特有の軽やかに高い少女の声…
が、酷く低くハッキリと狭い事務所に響いた。
ヤバイヤバイヤバイヤバイなにコレ嘘コレなんて言えばいいんだどうすればいいんだそうだタイムマシン落ち着いてタイムマシンを探せ俺でもどうしようびっくりしすぎて体がピクリとも動かねェ頑張って俺逆境なんかに負けないで俺!
この時初めてふたりの心は綺麗にシンクロしたが、見つめあったまま固まるふたりがそれに気付くはずはない。
「…なァんだ。私に内緒でふたりは恋人同士だったアルか!」
ぽんと手をつく古臭い仕草とともにそう言った神楽にすかさずふたりはユニゾンを披露した。
「「バっ…違ェよ!!」」
「え…じゃあ…セフ」
「「だァァァァガキがなに言うつもりだテメー!!」」
「うわぁ息ピッタリでラブラブアルな!」
大きな瞳を煌めかせそう言う少女に何も言い返せずただ呆然と空中を見つめた。
あれ?おかしいな景色が歪んで見えるんですけど泣いてる俺?
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