通常文

□おいくらですか?
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「なァ、コレいくら?」

「ええっ!?」

「…ンだよ」

「いやっ…何か今…空耳かな。ウン安斎さんかな」

残暑がやたらと厳しい今日この頃、人気の全くない公園で商いに勤しむおっさんが暑苦しい。その上非常に失礼な事を言いやがったので、元からない銀時の心の余裕が更にスペースを失っていった。

「あっそ。ンじゃもらってきまーすゴチでーす」
「あーッ嘘嘘嘘!200円!一個200円だからお願い!募金だと思って!」

「…」

なんだかイラつくのを通り越してうっかり泣きそうになってしまった。だが、必死なマダオの首元の汗が何とか憐れみの代わりに不快さを取り戻させてくれる。ヒゲとかグラサンとかうすらハゲとかやたら湿度と温度を上げてる気がする。

「まぁ頑張れやマダオ」

「くっそ…滅多にカネ払わねェくせに…助かるよあざーっす!」

銀時が手を開くとキラキラと光りながら二枚の硬貨が落下した。グラサン越しの瞳を潤ませ小銭を握りしめる長谷川に背を向け、公園を出ようとした時。

少し離れた歩道に見知った人影。

「…」

手の中にあるモノに一瞥くれた後、銀時は踵を返し小走りに来た道を戻った。





「…あ?こっちでいいの?」

「あぁ。早く寄越せ全く鈍臭ェな」

「チクショ…バカにしやがって…助かるよあざーっす!」



臨時収入って素敵だ。
このくらいの買い物なら悩まずに済む。

小さな幸せを口に含みながら、銀時は土手の向こうに消えた人影を追い掛けた。



さて、らしくねェことでもしてみますか。


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