通常文
□共犯者の葛藤
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「そりゃこっちのセリフだ。率先して言い触らすことでもねェし」
「…」
「俺もお前もバレたら面倒だろ。特にオタクの腹黒S王子とか」
「…あ…ありえねェ…」
「ウチも思春期のガキいるしなァ」
真っ青になってうなだれる彼を横目に頭を掻きながら俺は軽く溜息をついた。下の階にある柱時計がふたつ鳴る音がうっすら響く。
「…信用すんぞ」
いつの間にかすっかり生気を取り戻した鋭い眼光がこちらを見上げつられて思わずニヤリと返す。
「お前こそ裏切るなよ」
「…帰る」
小さく舌打ちしたあとそう呟き土方は手早く衣服を整え着流し姿なのにあっという間に鬼の副長へと戻っていった。
「じゃあな」
流れるように玄関へと向かう彼にソファに座ったまま正面を見据えながら声をかけた。
「いっこだけ正直にマジで聞かせて」
「…なんだ」
「…………後悔してんの」
声は震えていなかっただろうか。何故かさきほどの行為より緊張してしまっていた。どうしたのよ俺。
土方はたっぷり煙を吸い込んだあと吐きだしながら呟いた。
「…俺を誰だと思ってんだ。斬られねェだけありがたく思え」
そう吐き捨てるとピシャリと静かに戸が閉められ次にカンカンと階段の金属音がまるで遠くにあるかのように鳴り響いた。
「…答えになってねェ…」
そうひとり呟きながら、長く息を吐き背もたれにだらしなく寄り掛かると、銀時は内心明確な答えが返ってこなかったことに安堵しつつ汗でベタベタの掌を固いソファにこすりつけた。
END