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□第一種接近遭遇:土方編
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なんなんだコイツは。警察庁長官直属武装警察真撰組鬼の副長土方十四郎、なんてフザけた肩書背負って立つくせに一体なんなんだ。かぶき町のいかがわしい店の店主に色気ふりまいてどーしよーってんだ。ヤんのかコラ。いやもちろん本人が無自覚なのは百も承知だがついムラムラしてしまった自分への憤りを彼への八つ当たりで紛らわせようとしているのであって、さらにそのことが自分で自覚があることが銀時は情けなく、堂々めぐりのようにまた土方を責めるのである。…ホント疲れる。

大きく溜息をつきやはり酒でも呑もうと立ち上がろうとした時さらなる悲劇が起こった。
「ん゛〜……」
再び身じろぎをする土方に大袈裟に肩を揺らし中途半端な態勢で固まり銀時はゆっくり彼のほうを見た。眼は閉じられていたがうっすらと見える口元がなにか言葉を発しようと動いていた。

(また寝言か…?)
からかうネタにでもしてやろうとハッキリ聞く為少し顔を近づけた。
すると土方のその顔は、おそらく意識があるときはほとんど誰も見たことがないであろう、そして銀時の前では死んで生まれ変わっても表れないであろう穏やかで優しい笑顔を描き。これ以上ないくらい眼を見開き固まったままの銀時の耳に掠れた声がトドメを刺した。

「銀時…」

フッと心底楽しそうにもう一度微笑んで彼は再び深い眠りの世界へ旅立った。


「…ァ〜?…」
ずいぶんスッキリ眼が覚めた。いつも睡眠が上手く取れずたいてい頭がぼんやりしたままなのに。さらにいつもと少し違うのは、自分が起きるとき隣でよだれを垂らしいびきをかいて寝ているマダオがいないことだ。
(便所か?)
ひとつくしゃみをして服を着ようと腕を伸ばした拍子に布団の脇にあった目覚ましを倒してしまい土方は呆然とした。
「やべっ…!」
時計の針は既に4時5分前を指していた。屯所では5時半に起床で戻ってから風呂にも入りたいのにこれでは屯所での睡眠がほとんどとれない。いつもは3時には帰っていたのにとんだ失態だ。
慌てて着流しを身につけ焦る気持ちを押さえ静かに襖を開けた。
「ぅおっ!!」
その先にあった光景に土方は体を強張らせ思わず悲鳴じみたものをあげてしまった。

「………よお」
「…なにしてんだテメェは」
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