通常文
□第一種接近遭遇:土方編
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そこには目の下にひどいくまをつくり幽霊のような悲壮な表情で明かりも付けずにだらしなくソファに座った銀時がいた。
「こんな早く行くのか?」
「これじゃ寝坊だ」
「フーン…イイ夢でも見たの?」
「はぁ?」
「…いや何でもねェ。オラ早く行けよ。」
「無職に言われなくても行くわ。」
ギロリと睨みつけ煙草をくわえながら土方はスタスタ玄関のほうへ歩いて行く。
ちょうど戸が閉められ銀時の姿が見えなくなる寸前に土方は小さな声を聞いた。
「またな」
目を見開いた土方は一瞬固まったがすぐに無言でピシャリと戸を閉めた。
人工の光が瞬くいまだ薄暗いかぶき町で、人気のない路地裏を頬を染めて足早に行く黒い男と、自宅の居間で同じように頬を染め頭を抱えて唸る白い男は今日も無事、世間で言うところの”逢い引き”を終えたのだった。
END