通常文

□さまようエイリアンの手
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「俺をなんだと思ってんだ」
「パシリだろ」
「ぶん殴るぞ」

引き千切れそうなビニール袋をぶら下げた彼は極めて不機嫌にそう呟いて隣へと腰を下ろした。

「金返せよ」
「ぐぅ」
「寝たフリ!?ベタだなオイ」

プシッと小気味よい音をたて彼は缶ビールを煽った。
「よくこんなとこで一人で呑んでたなァ」
「あァ?ビビッてんのかテメー」
「バッカちげーよ。俺はただ一般論を言ったまでで」
「あ〜ハイハイ」
「ちょっ…流さないでくれる?ホント怖くないから。むしろこーゆうの好きだから」


次々と酒を空けながらくだらないことを言い合う。ここはかぶき町のはずれ、人気のほとんどない神社。境内にあるちょっとした休憩所だ。

彼が最近持ち出した携帯電話に連絡するのは今回がはじめてではない。彼から来ることもたまにある。

一体なんなんだろう。

もう考えるのも飽きた問いが一瞬頭をかすめるがすぐにどうでもよくなる。

そうだ。正直この男に関することはもうどうでもいい。

なにからなにまでまったく相入れない関係。永遠に交わることのない別の生命体。俺は誰にもなれない。

俺でしかいられない。

それは彼にとっても同じことだ。

人間誰にも同じことだ。

全部知ることは不可能なのに。

自分の中に欠けたものがあると感じてしまい、それを埋めたいと感じてしまう。





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