通常文
□東雲に背く狼たち
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すべてを暴くように煌々と輝く冬とは違い、ぼんやりと柔らかな光を放つ月は優しく彼の輪郭をぼやかした。
…違うっつーの
思わず息をのみ前方に見えたその影に怯んでしまったあと、思い浮かんでしまったコトを全力で否定した。
今日 彼と再び会ってしまったのは 偶然じゃないかもしれない
なんて
今時昼ドラにもないご都合主義だ。
「…こんなとこほっつき歩いてていいのかよ」
「あァ?」
「今頃あの別嬪が泣いてんじゃねェの。いらねェなら俺にくれ」
「………へっ。アイツにも選ぶ権利はあンだよ」
「…そーかボコられてェのか」
「一般論だ」
嫌な笑みを浮かべ煙草を吹かす彼は、月明かりに照らされ白煙を身に纏いどこか浮世離れしていた。
「…つーかナニやってんの」
「…………散歩だ」
「…あっそ」
この空気。
ふたりの間を満たす独特のこの空気のせいでなんとも言えない感情が湧き起こる。もやのように体に拡がる居心地の悪さ、何かに急かされるような焦燥感、いつの間にか鼓動が早くなる。
「…んじゃあな」
なにをどうしていいかわからず、顔には出さずとも珍しく狼狽していた銀時はひとつ溜め息をついた後そう言い踵を返した。
「オ、オイ…」
「あ?」
予想外に呼び止められ銀時は眉間にしわを寄せ体を斜めにして振り向いた。
目の前の相手は相変わらずせわしなく煙を吐き出していて所在無さげに首を掻いた。
「いや…アイツは昔住んでた所の知り合いで…」
「…」
「たまたまこっちに遊びに来たただの昔馴染みなんだ。だから…」
銀時は目を見開いて相手を凝視した。
なんだ。
一体なんなんだ。
この男は何を言おうとしているんだ。
、