通常文
□東雲に背く狼たち
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すっかり停止して固まってしまった体とは裏腹に猛烈なスピードで深読みを始める脳内に焦って、銀時は張り付きそうな喉をようやく震わせ声を発した。
「…だから何」
「…イヤその…」
「だから何だよ。その後があんだろ。"だから"っつーのは接続詞でその前の内容を踏まえた理由が続くんだよフツウは」
混乱しているのか異様な早口で国語教師のようなことを宣う銀時を、土方はバツが悪そうに睨んだ。
「"だから"、何」
もう一度、ゆっくり凄みを増した声を土方に投げ掛けた。
何を言ってるんだ俺は。
こいつを追い詰めて一体なんになるってんだ。
それは同時に自分の首も締める行為だ。
頭の中を自宅のボロい洗濯機のように様々な思考が渦巻いている。
クソ。
俺が越えた壁は結局肉体だけで、他の壁にはぶつかってすらいなかったんだ。
昼間見た二組のカップルが脳裏を過ぎる。
腹を 括るか。
このセリフはお前にだけじゃなくて自分に対しても言うんだ。
「ごまかすなよ」
いつもと全く違う表情で真っ直ぐ自分の目を見つめて、いつもと全く違うよく通る声でピシャリと言われ、土方は新たな煙草を取り出すのも忘れ呆然とした。
「…テメェこそごまかしてんだろ」
土方にしてみればやっとの思いで、実際にはそんなに時間は経っていなかっただろう、そう言い返した。
「…へっ。残念ながらもう無理」
そこにはもういつもと同じやる気のない顔で頭を掻く銀時の姿があった。
ふたりを隔てる僅かな距離の上、鋭い視線が絡み合う。
「…ほら。早く続き言えよ」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ腕を組む彼に一瞬目を見開いた後、土方は思わず額を押さえ俯き肩を揺らして笑いを堪えた。
さあ
随分逃げ回っちまったけど
仕切り直して
覚悟決めて
今から始めようじゃないか
真っ向勝負
狩りの時間だ
END
このあとふたりはどうなるんでしょうか…ι?(聞くな)