通常文
□匂い立つ音
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今日の空と似たしかし全く異なる髪はキラキラと水滴を纏い光を生み、首筋を伝う雨粒は均整の取れた筋肉を際立たせた。
どこぞの欲求不満のババアじゃあるまいし何を考えているんだ俺は。
相変わらず規則正しく鳴り響く雨粒は水溜まりに落ち幾度も波紋を広げては消え、広げては消えていく。
ベタつく自分の喉元をひと撫でし軽く溜め息をついた。
目の前の風景いっぱいに白い筋になって落ちる雨をぼんやり眺めていると突然、視界が真っ赤に染まった。
「!?」
驚いて横を向くとすぐそばに白い男の顔。
「見られちゃマズいだろ」
誰もいない通りに向かい赤い傘を広げ、体格のいいふたりの男の上半身が辛うじて隠される。
「んっ…」
いつの間にか火がつかない煙草は傘を持つ彼の指の間に収まり、もう片方の手の中には俺の顔が収まっていた。
何度も角度を変えては激しくお互いの咥内を侵す。
くちゅりと鳴る水音は雨に掻き消され、さらにその雨音さえ遠退いていき、いやらしい音は自分の脳内にのみ響き渡る。徐々に頭がぼんやりしてくるのはおそらく酸素不足のせい、だけではない。
「っ…はぁ…」
ようやく離れた唇はどちらも妖しく煌めいて突然甦る様々な音たちに現実へ引き戻される。自分の頬が熱くなるのを感じいたたまれなくなってしまう。
「…このままここでシようか」
小さく息をついたあと、ニヤリとだらし無い笑みを浮かべこちらを見つめながら言う彼を思い切り殴りその手から傘を奪い取る。
「冗談に決まってんだろ〜」
頭を掻きながら抑揚のない声がそう言うのを背に受け、ぱしゃぱしゃと来た道を戻りかけた。
しかしどうにも気分が納まらずくるりと彼の元へ引き返す。
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