通常文
□匂い立つ音
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「…なに」
「貸してやるよ。屯所のほうが近い」
「…今更って気もするんですけど」
濡れた着物の裾を絞りながら銀時は呟いた。
「いいから持ってけ。…絶対返せよ」
「…一緒にさして帰ろうとか言えねェの」
「死んでも言うか」
「…だよな」
フと柔らかな笑みを零し傘を受け取る彼を見た後、一刻も早くその場を離れたくて、跳ねる泥も忘れて屯所まで走って帰ったのだった。
雨が 鉛色の雲が
世界をひとつに繋げてゆく
壁の外から聞こえるたびに 俺は鮮明に思い出す
溶けゆく銀色、匂い立つ音
END