通常文

□姫の機嫌を損ねるな
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「…さっきからなんか変アル」

「…きき緊張してんだよ!なぁ!?」

「え!?あ…あァそうだな!」

不気味な笑顔を張り付けてカチカチとライターで火をつけ続ける男とカップに砂糖を入れ続ける男に少女は首を傾げるが、突然輝く笑顔で身を乗り出した。

「そうだ!ふたりの馴れ初め聞きたいヨ!あんなに仲悪かったのになんで付き合ってるアルか?」

「ぶほぉッ!」

ふたりはやっとついた煙草とやっと口を付けたコーヒーを同時に吹き出した。

「げほっ…ふふふきん!台ふき持ってくる!」
「テメッ…!」

逃げやがったな変態天パァァァ!

ダラダラと体中の水分が流れ出る錯覚に陥りながら土方は辛うじて煙草を掴み白煙を吐き出した。

やべ泣きそう。てかコレ全くゴールが見えねェ。

「照れるナ教えろヨ!」

テーブルに乗り上げて顔を近付けてくる少女からあからさまに視線を逸らし、脳内を音速で血液が駆ける。

馴れ初め!?馴れ初めってなんだ結婚式とかでハゲのおっさんがよく言うアレかふたりの出会いは大学のサークルで…とかイヤイヤイヤ俺とあの無職にゃ当て嵌まらねェだろてかそもそも付き合ってンのかどうなんだあっそうかコレはただのフリであってこのチャイナさえだまくらかせばイイんだ頑張れ俺考えろ俺何か上手い言い訳を…

「なんとなくだよな!?」

「わっ!?」

突然真後ろから聞こえたやたらハキハキした声に、すっかり自分の世界へ旅立っていた土方は跳び上がりそうになる。

「そんなモンなんだよ神楽ちゃ〜ん。ホレ買い溜めといたぜ」

「わぁ1日ぶりの酢昆布!」

銀時は今だ胸を押さえて呼吸を整える土方の横にドカリと座り、神楽に向かってポンと小さな箱を放った。

神楽はしばらく酢昆布に夢中になりふたりから気が逸れ、その隙を見逃さずまたしても小声でお互い罵り合う。

「バカかお前は!?なにキョドってんだもっと上手く立ち回れや!」

「あァ!?ンでテメェにそこまで言われなきゃなんねンだ!こっちは協力してやってンだろが!」

白熱しすぎて額を突き合わせギリギリと睨み合うのを、いつの間にかきょとんと見つめていた神楽は可愛いらしい声で割って入った。

「私の前でもイチャつくなんて相当なバカップルアルな」


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