通常文

□犬の性分
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「…お前も隅に置けねェなァ。どこの店の子?」

「テメェと一緒にすんな。金払ってまで女に付き合うほど困ってねェ」

「はは〜ん。てコトは彼女か?仕事中に逢い引きたァいいご身分じゃねェか」

「…なんだテメェ妬いてンのか?」

「……………はあ?」


パシ、と払われた手を宙に浮かせたまま固まっていると、彼はドサリとソファに身を沈めふてぶてしく煙草を吹かし始めた。

「男のヤキモチはみっともない上情けねェぞ」

「…何言っちゃってンの」

ソファの端に腰掛ける彼と同じように反対側の端に座り、同じように踏ん反り返ってやった。

「羨ましいンだろ?無料でしかも頼みもしないでも女が寄ってくる俺が」

「…」

背もたれに腕をかけ気怠げに髪をかきあげ灰皿に灰を落とす彼を見て、思わず強張っていた体の力が抜けた。

なんだ。
そっちの意味か。



…"なんだ"?



ゴクリと大袈裟に上下した喉を自分で感じ、ごまかすような頭を振った。




ハイハイ分かってますよコノヤロー。
お前にはお前の役割が、俺には俺の役割が。

火照った身体はブレーキなしで崖を転がり落ちたけど、いちばん大事な所は上手く綺麗に処理してるもんな。

真っ正面から何かを突き付けられても正直困るのはお互い様で、曲がりなりにも成人したイイおっさんだってのが救い、なんだろうか。

酷く幼い、むしろ原始的な感情にすっかり支配されてしまっている現状は、まぁ目をつむっておこう。

このモヤモヤが、
一方通行じゃないのは知ってる。

それを、お前も知ってるってのも知ってる。

出来レースなんて簡単な話じゃないんだぜ。




「…で?」

「あ?」

「何しに来たンだよ」

「あ〜…休憩を兼ねた雨宿り」

「人様の家ラブホ代わりにしてンじゃ…うそ、雨降ってる?」

「あぁだいぶ前からな」

「マジでェェェ!?テメ早く言えや!何のんきに煙草吹かしてンだ!布団!新八に鼻フックで殺される!」

「もう遅いンじゃねェか?」

「手伝うとかそーゆう回路はねェンですか副長様」

「悪ィな、家事はやったコトねェんだ。オンナが勝手にしてくれるから」

「…」


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