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□犬の性分
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慌てて立ち上がった後振り返って見れば、ニヤリと勝ち誇った表情で短い煙草を口から離す彼はソファに足を投げだしリモコンをいじり出している。

「…よく学校帰りにこうやってダチのたまり場になってる家ってあったな」

「ぁ〜…そうだな…」

お目当ての番組に当たったのか、リモコンを胸に置き全く感情の篭らない相槌が響く。





「…君は僕のオトモダチなんですかヒジカタくん」





「…」

ぴくりと微かに歪んだ彼の眉と震えた睫毛が、物言いたげな黒い瞳を混沌に彩った。



「あ〜…もうイイや面倒くせェ。どうせ濡れて使えねェし」

襖にかけていた手を離し、頭を掻きながら彼の座るソファとテレビの間に立つ。

「…見えねェ」

「どうせ再放送なんだろ」

「馬鹿、そこが重要なんじゃねェか…オイッ」

中途半端に寝そべる彼の上に、ギシリと音を立て乗り上げた。
自分が作る影が彼の顔に落ち、見上げる鋭い瞳に進んで緩い視線を絡める。

「銀さんヤリたくなっちゃった」

「…猿かテメェは。きのうもヤったんだろ」

「生憎ピチピチの男盛りなモンでね」

「死ね」

低く渇いた声は確かに可愛いげも色気もあったモンじゃないが、抵抗しない彼に益々興奮してしまう。
男の支配欲なのか、ただ単に俺の歪んだ性癖なのか。




あぁ
答えなんていらねェよ。





ぐっ、と開いた首筋に顔を寄せれば先程と同じ甘い香り。

「ん〜…イイ匂い」

「チッ…変態が」



偶然懐いた野良犬が他所の家で尻尾振る姿も、案外興が湧くようだ。



どんな顔して
どんな声で

一体ナニを囁くのか。



お前は妄想する愉しみもくれる。




鼓動する生暖かい肌に顔を埋めた時、ソファの下にあった丸められた件の名刺に気付き、声を殺してくっと笑った。








END
フツーに女と遊ぶひじ、フツーに風俗通う銀にもえ。
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