通常文

□混乱するジャンクション
3ページ/3ページ

名残惜しそうに振り返る子供に軽く手を振り、去り行く家族の背を目を細め見つめた後、またしても煙草を取り出し彼は腕を組み俯いた。






振り出し、に戻ってしまった。



その表情は、子供に向けられたようなそれとは掛け離れている。

怒りのような悲しみのような諦めのような疲れのような。



まるで、俺が与えられるモノを具現化したようだ。

「…」




彼の、何度目かわからない時計を確認する仕種に我に返った俺は、点滅する緑と彼を交互に見た後固まっていた足を踏み出した。








早く行こう。


雨が降る前に、

赤になる前に。



早く、この横断歩道を渡ろう。



だって、仕方ない。

そこに、彼が待っているから。




END.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ