通常文
□混乱するジャンクション
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名残惜しそうに振り返る子供に軽く手を振り、去り行く家族の背を目を細め見つめた後、またしても煙草を取り出し彼は腕を組み俯いた。
振り出し、に戻ってしまった。
その表情は、子供に向けられたようなそれとは掛け離れている。
怒りのような悲しみのような諦めのような疲れのような。
まるで、俺が与えられるモノを具現化したようだ。
「…」
彼の、何度目かわからない時計を確認する仕種に我に返った俺は、点滅する緑と彼を交互に見た後固まっていた足を踏み出した。
早く行こう。
雨が降る前に、
赤になる前に。
早く、この横断歩道を渡ろう。
だって、仕方ない。
そこに、彼が待っているから。
END.