DARK

□ミテ ミヌ フリ ヲ スル オトナタチ。
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 僕のかよう学校は、体罰を見てみぬふりする先生しかいなかった。

「なんて悪い成績だ!」
「ごめんなさい、次頑張りますからゆるしてください…」
「それはもう聞き飽きた台詞だ!」

 ああ、またはじまる。
 “儀式”が。


「先生、いや、先生やめて、やめて!」
「やめない」

 先生は僕を全裸にして、何度も体中をたたいた。

「痛い!痛い先生、やめて!」
「なぜ?」

 それから十数分叩きに叩かれてぐったりした僕を見て、先生は満足気に笑った。

「痛いか?」
「は、い…」
「よしよし、わかった」

 先生は乱暴な手つきで僕に服を着せて、放課後の保健室につれていった。

「寝なさい」

 僕を保健室のベッドに寝かせてから、先生が言った。

「もう、家に帰りたいです」
「寝なさい」

 先生はそれしか言わなかった。また叩かれてはかなわないので、僕はそれきり黙って目を閉じた。


 夜中、ハッと目が覚めた僕は慌ててベッドから飛び降りた。

「寝なさい」

 ベッドの仕切りを開けると、先生がいて、またそう言った。

「いつになったら家に帰してくれるんですか?」
「寝なさい」
「家に帰りたい…」
「寝なさい」

 先生は壊れたおもちゃのように、何度も何度もそう繰り返した。

「先生、寝なさいって言わないで、他のこと喋って」
「寝なさい」


 いい加減いらいらして先生の顔を見ると、ああ、と納得した。



「先生、壊れちゃったんですね」



 壊れた先生はもういらないので、焼却炉に捨てて、僕はやっと帰宅しました。




終。
 

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