DARK

□短篇集
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(ああ、そういうことね)

 なるほど、と呟いたその瞳は、例えるならば灰色に濁っていた。

(誰なの、その人?)

 肩なんか組んじゃってねぇぇ。

(あの人も馬鹿なもんだね…あなたもそのうち、今の僕みたいになるんだから。どうせ)

 今のこの気持ちを色で例えるならば、紫色の嫉妬心と、赤黒い憎しみ。

(……ふふ、馬鹿な男。そんなもの、すぐに壊してあげるから)

 わざとらしく男の前に現れて、にこりと笑って会釈する。

「あら何あなた、ユウの友達?」
「恋人です」
「はあ?」

 何を言ってるのよ、女が言った。

「ね、ユウ。誰こいつ」
「…仕事の、同僚」
「ああ、それじゃあなたもエクソシストってわけ。何なのよ恋人って」
「あれ、知らなかったんですか?本当なんですよ?神田は両刀使いですからね」
「…あんたユウに何か恨みでもあんの?やめなさいよ気持ち悪い。
 …ああ、あんたゲイで、ユウが好きなのね。
 自分が報われないからって私をさげずみにきたんでしょう!」
「違いますよ。全部、何もかも違う。
 僕はあなたなんかどうだっていいんです。他人なんだから。
 でもあなたが今腕を絡めてるその人は他人じゃないから、その人に話をしにきたんです。
 紳士的にね」

 行きましょう、と女が神田の腕をひいた。

「……いや」

 にこ、と目を細めて笑って神田を眺める。

「………悪い、こいつと話がしたい」
「ユウ!」
「ほら、あなたはさっさと消えてくださいよ」

 神田は俯いて、僕から目を背けた。決して目をあわせようとはしない。

「ほら邪魔ですよ、あなた」
「……いつか殺してやる!」

 女の言い分がおかしいわけではない。そう言いたいのもわかる。

 しかし神田は、今この時、まさに女を捨てたのだ。
 女はさっさと去っていった。

「で?どうして話を聞いてくれる気になったんですか?」
「……お前が、笑ったから」
「それは、どういうイミ?」

「よくないことが、おこる」







FiN

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