短編2

□楽しみに待っていて
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 六月十八日。多忙な黄瀬だが、弄ってきつつも何だかんだ仲のいいキセキや、応援してくれるファンの子のお陰で、この日――今日が何の日かは分かっていた。
 やって来る一年に一度。生まれて十六回目の六月十八日。十五回目の誕生日。
 黒子はシェイク割引券を五枚、青峰は巨乳モデルの写真集、緑間は本日のラッキーアイテム、紫原はありったけのお菓子。桃井は手作りケーキ(という名の暗黒物質)。ファンはお菓子やらアクセやら。
 一番祝ってほしい人からは、物どころか言葉ももらっていない。別に物はもらえなくてもいいが、勿論もらえた方が嬉しいが、言葉くらいはほしかった。

 といっても、何も言ってもらえないのではと泣きたくなっているわけではない。イベントに力を入れるタイプではない赤司だが、何かしてくれないわけがない。そこら辺はきちんと分かっている。だから黄瀬は、赤司っちどんなお祝いしてくれるんかな、と気楽に構えていた。


「今日はお前の誕生日なわけだが。まずおめでとうと言っておく。……で」


 皆が気を遣って二人きりにしてくれた帰り道。やっと半分暗くなった空を目だけで見上げて赤司は言った。何がほしい? ――宵の暗闇が落ちて暗くなった赤い目が黄瀬を見上げた。


「そりゃあ赤司っち――」

「却下」

「ちょっ、酷くないスか!?」


 明るくおどけてみたが、実はけっこう、赤司の「却下」は胸に刺さった。言い方がまた悲しいのだ。まったく照れていない。照れ隠しでも何でもなく、本気で拒否された。


 未来のことなんて分からないのに欲しがるな、なんて思ってんのかな。ああ、だったらアンタは、オレがどんだけアンタを好きか分かってない。


 面白くない内心は今は隠しておく。これから赤司も黄瀬家へ行くから、そこでじっくり話せばいい。運良く家族全員帰りが遅いから、赤司に我が家で夕飯を食べてもらうのだ。ちなみにメニューはご飯と湯豆腐とオニオングラタンスープだ。和洋が合わない感じに折衷しているが気にしない。
 他には、と赤司が言うから、半分以上本気で「赤司っちをもらえる券」を所望したがまたも斬られた。


「えー……あー……じゃあ、赤司っちの料理食べたいな」

「そんなの、いつでも作ってやれるのに……」

「誕生日祝いのご馳走を作ってもらえるのは年一回じゃないスか」

「まあ、それも確かに……分かった」

「やったーあ!」


 三度目にしてやっと頷いてもらえて思わず出た叫び声。うるさいと腹を殴られたが、それでも幸せいっぱいだった。拒否された二つへの曇りは残ったままだったが。



* * *



「…シネ」

「えー、お願いっス! ほら、せっかくの誕生日だし!」

「お前は願い事を間違えたな。それを着るのを誕生日プレゼントにして、夕飯を作るのは普通に頼めば良かったのに」

「じゃ、じゃあそうするっス! チェンジチェンジ!」

「…………」

「ね? お願いっス」

「……………………仕方ないな」


 破れそうに薄いが実は丈夫なソレを持って、赤司は黄瀬の自室へ消えた。赤司が出てくるのを待つ間、黄瀬はメールをチェックした。仕事のものがあったので返信しておく。
 下準備くらいはしておいた方がいいだろうか、けれど全部赤司が作ったものを食べたい――でもやはり任せっぱなしは。リビングで悩んでいるとドアが開いた。バッと振り向くと、影がドアに隠れる。
 歩み寄ってドアを全開にする。ノブを握っていたらしく、赤司がバランスを崩した。


「あぶな…っ」

「…………」

「赤司っち?」

「見せたぞ。しっかりと。だから着替える」

「いやいやいや、せめて帰るまで着ててほしいっス」

「何がせめてだ! それ以上の時間着られるわけないだろ!」

「食べ終わるまで!」

「却下」

「…食べ始めるまで!」


 真っ赤な顔で難しい表情をして、赤司は考えるように黙った。やがて溜め息をついて頷く。やったーあと叫んでまた殴られた。
 メイド服には既にエプロンがあるから、エプロンはいらない。赤司がそのままの格好で台所へ向かう。ニーソックスとスカートの間の肌が眩しい。一般宅でメイドというアンバランスさも。
 待っている間テレビを観ようと一瞬思ったが、せっかくだから様子を見に行こうと考えをシフトする。
 赤司は玉ねぎを切っていた。家では使用人が作っているから経験はあまりないだろうに手際がいい。しょっちゅう作っている桃井に進歩がないのが本当に解せない。


「黄瀬、気が散る。散歩でもしてろ」

「何でここにきて散歩なんスか…」

「ああ、無理か。リードを持つ人間がいないもんな」

「な、泣くっスよ」

「…………」

「な、んで赤司っちが泣いて――玉ねぎ染みたんスねかわうぃぃぃいいいい!」

「黙れ、……っ」


 突然ボロボロ涙を溢し出した赤司が顔を歪める。包丁がまな板に当たる音が止んだ。左手の人差し指の第一関節に赤い色が見えた。それはたらりと指を流れて。


「うわっ! すんません!」


 慌てて赤司の左手を掴んで、傷口を口に含む。制止の声は無視する。
 バスケ選手の指に傷だなんて洒落にならない。こんなことなら大人しくテレビを観ていればよかった。


「…あまり気にするな。支障は無い」

「そんな、ちょっとくらいは…」

「まったく無い」


 本当だ、とフワリと笑って、包丁をまな板に置いた赤司が頭を撫でてくる。びっくりして指を強く吸ったら、赤司の表情は崩れ、頬が染まった。
 あれ? ――何かに気付けた気がして、もう一度強くする。


「いっ…」


 漏れた声はベッドの中で聞くものと同じだ。だが痛そうで、攻め方を変えてみる。強く吸うんじゃなく、弱く吸ったり、舐めたり、爪と肌の境を舌の先でつついたり。赤司はそのたびに体を跳ねさせたり、逃げようとしたりした。


「ぁ…う…っ、黄瀬、やめ…っ」

「感じてるんっスね、赤司っち。ビクビク震えちゃって」

「ち、が…! ばかっ」

「そっスよねー、やっぱメイド服着たんだしヤらなきゃ損っスよね!」


 絶句した赤司を抱えあげて自室のベッドに直行する。まだ若干抵抗する手を押さえて口付ける。赤司から抵抗の意志と力を奪う、深い口付けを。


「んむっ、は……ぁ、ん…ぅむう…」

「…かわいい、すっごくかわいい」

「ぁ、黄瀬っ…」


 体から力が抜けた赤司の胸を布越しに舐める。つついていって乳首を探して、見つけて吸い上げる。もう片方は指で探し当てて、周りから真ん中へクルクル撫でた。


「はぁ…っ! あ、ぁっ、ん…、っ、」

「ああほら、見えるっスか? エプロン、色変わっちゃったっスよ」

「お、れのせ、じゃ、ないだろ…っや! ひっぱっちゃ…ぁ!」

「ふふ、張りついて乳首の形が見えるっス」

「言うなばか…ひぅっ」


 大きく開いた胸元から中に手を入れて直接乳首を弄りつつ、耳に舌を突っ込む。唾液をいっぱい絡ませて、つついて噛んで吸う。そうしながら見ると、赤司は両の目を違う細さにして、黄瀬の制服を掴んでいた。
 あまりの可愛さにこちらがやられてしまいそうで、空いている手をスカートの裾から侵入させる。手触りから下着は男のもので、女物を用意しておけばよかったと後悔する。


「いつもより大きくなんの早いし、先走りいっぱいじゃないっスか? やっぱたまにはこういうのもいいっスね」

「うるさっ、きせ、耳、もっ、やだぁ…!」

「えー…、赤司っち、耳弄られて気持ち良さそうにしてんのに」

「いやなものは、ぁ、いやだ…っ、から、早く、」

「…ご主人様、って呼んでくれたら、やめたげる」


 赤司の言葉がピタリと止んだ。喘ぎ声は続いているが。
 つぅ…っ、と耳を舐めあげて何度目かの「せっかくだし」を使う。極めつけにすがる目をしたら、赤司がおずおずと口を開く。


「ぁう…ぁ……ふ、…ごしゅ、……ごしゅっ、じん、……さま」

「よくできました」

「ひぁ、あっ!」


 下着を脱がせて性器をしごく。先走りを全体に塗りたくって、先っぽを爪でグリグリ押すと、目をキュッと瞑った赤司が震えた。


「ぁあ、ふ、イっちゃ、イっちゃう…!」

「そ?」

「…っな、でやめ……ひあぁっ! まっ、乳首は、も…っ」

「あーかしっち、オレがどうしてほしいか、分かるよね?」


 優しいようで意地悪に聞く。限界が近いのか、赤司はすぐに黄瀬の望むことをした。


「ご主人様、ゆびっ、ゆび、後ろにいれてほしっ、です…っ」

「あれ、ちんこじゃないんスか」

「うん、おしり、がいい…おねがっ」

「…何かマジで女の子みたいっス」

「ぁんっ! や、あぁぁ…あっ、きもち…は、ふぅ…」


 もしかしたら滅多に入らないスイッチが入ったのかもしれない。赤司からほとんど躊躇いが消えている。
 本格的にこちらがまずくて、赤司の様子を見つつ最速で指を増やす。


「ふぁ、んぅ…! ごしゅじ、さまっ、も、ほしっ…いっぁあっ! ごしゅ、さまの、」

「ああああやっぱ入ってる! かわいい! けどもたない!」

「はやく…っ」

「かしこまりましたっ」

「いあぁぁアアッ! は、ぁっ…んん!」


 正常位で赤司の後孔に己の性器をずっぽり挿れる。潤んだ目、涙と涎でグチャグチャの顔、メイド服。すぐにも達してしまいそうなのを抑えて腰を振る。内壁を擦って前立腺を突いて、先走りを流す性器を擦る。


「ホント、かわいい…オレのメイドさん」

「んはぁっ、あ、イくッ、ひぁぁああんッッ!」

「っ、く、オレも……っ」


 一緒に果てて、ぐったりした赤司の額に貼りついた赤い髪を払う。
 夕飯の準備は、手伝った方がいいだろう――と、ぼんやり思った。



* * *



「そういえばなんで、赤司っちがほしいってお願いは却下したんスか?」


 ご飯と湯豆腐とオニオングラタンスープが並んだ。食卓。制服に着替えた赤司と向かい合ってそれらを食べながら、黄瀬は聞いた。セックス中はすっかり忘れていたが、今思い出した。
 幸せそうに湯豆腐を口に運んで赤司が首をかしげる。どうしてそう、天然にあざといのだ。


「オレのことは、十八歳になるまでとっておこうと思って…」

「…っうわ、あ〜……」

「黄瀬? …引いたか?」

「何でそうなるんスか。変なトコで鈍いんだから……逆っスよ。嬉しいんス」


 そして、敵わないなあと思っただけ。どんなことにも、身長以外、赤司には敵えない。けれどしかし、身長以外にも、彼と並べられるものはあった。
 赤司が自分にくれる愛情と同じくらい、自分も彼を愛している。





END.









* * *
黄瀬君誕生日おめでとう!
今回もギリギリセーフでした。〆切を破ったことがないのが密かに微妙に自慢だったりします。
ちょっと赤司様がキャラ崩壊しかけた気がしますが…ベッドの中じゃ多少は崩壊しますよね多分。
早速アンケを元にした裏を入れてみましたがまあ難しい。

 

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