短編2

□どうしても欲しかった
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 テスト前、青峰は黄瀬と共に赤司の勉強会に強制参加させられていた。最近モデルの仕事が忙しい黄瀬はいないことが多く、赤司と二人きりの場合が多い。赤司に何かしてしまわないよう我慢するのが辛かったり、二人きりでいられるのが幸せだったりで、青峰の心は複雑だった。
 熱心に公式を覚えるフリをしながら、晒されたうなじや緩められたネクタイから除く肌や、伏せられた長い睫毛を眺める。


「――じゃあ青峰、三角形の合同条件言ってみろ」

「え、あー…全部同じ長さ、とか」

「そんな簡単なの、一問出るかどうかだろう。真面目な顔をしていると思ったら…またナントカマイのことでも考えてたのか?」

「堀北マイちゃんな」


 お前のことだ、と内心で答える。どうしようもないなと苦笑する赤司はあり得ないことに何故か儚げで、守ってやりたくて、滅茶苦茶にしたくなる。
 まあ、そんなこと、できるはずもないのだけれど。


「お前、袖にご飯粒ついてんぞ」

「え、なっ…」


 ふと発見したことを伝えると、顔を真っ赤にして袖を触り出す。摘まみとったご飯粒をゴミ箱へ投げ捨て、気まずげにそっぽを向いている。
 こんな風な赤司を知っているのは自分だけだと思う。
 自分だけが知っていると、何故か信じて疑わなかった。



* * *



 自分だけ、それが覆されたのがたった今。

 ――氾濫した川のようにひっくり返された。


「んっ! ひ、ぁあ…っ! きせ、や、そこっ」

「っは、ヤダじゃなくて気持ちいい、っスよね? それとほら、黄瀬じゃなくて」

「ぁふっあ、あ、っ…りょ、りょー、た…っ、そこ、ぁっきもち…!」

「よくできました」


 誰より早く着いて、皆を――主に赤司を驚かせようと思ったら、部室には先客が二人いた。ロッカーに背中を押しつけた赤司が黄瀬に揺さぶられている。何度回されたいと思ったか分からない白い腕は黄瀬の首に回っていて――


「んぁ…っあ、りょう、たっ、こえ、きこえちゃ…っふぁ!」

「誰もいないしいいじゃないスかー。まあでも気になんなら」

「っんむ! んんんっんー、ふ、うぅゥん…っ」


 ラストスパートなようで、黄瀬が突き上げを激しくし、赤司の口を塞いだ。赤司は必死に黄瀬の口に吸い付いて、貪っている。
 やがて赤司の腹を白い液体が濡らした。尻の中も同じものでいっぱいになっているだろう。
 誰より愛している男が他の男の手でよがっている――
 青峰の足は、いつの間にか屋上へ向かっていた。



* * *



「さあ、今日は理科をやろうか」

「…………」

「…青峰?」


 恒例になりつつある勉強会。今日は黄瀬の部屋が会場だが、部屋の主はいない。少し前に急な仕事が入って、「二人が帰るまでに戻ってこれないと思うから、しめたら鍵はポストに入れといてほしいっス」と慌ただしく出ていった。自分達を帰さなかったのは、まだまだ暑い外を歩かせたくないという優しさだろう。
 部屋には青峰と赤司の二人だけ。


 黄瀬は、いない。


 それを再認識した瞬間、青峰はベッドに赤司の体を押し倒していた。急なことに赤司が驚いている間に、例によって緩められていたネクタイをほどき、両手を一括りにした。
 縛り終えた直後に赤司が驚きから帰ってきた。


「何の真似だ。外せ!」

「何でせっかく結んだのほどかなきゃなんねェんだよ」

「意味が分か……っむ!? んむ、ぅ……あお、んんっ…」


 乱暴に口付けて黙らせる。奥の方へと縮こまる舌を追って捕まえて、絡めて吸う。体でも逃げる赤司は身を捩るが、抵抗は青峰が持つ加虐心に火をつけるだけだ。
 口を離して赤司のシャツのボタンを外していくと更に抵抗された。縛った上押さえつけているから、あまり意味はない。さらけ出した白い肌にゴクリと唾を飲む。同時に、胸の辺りに見つけた赤い痕に無償に腹が立って、上書きするように吸い付く。


「ひ!? あっ、やめ、あおみ…」

「可愛い乳首してんのな。女みてえ」

「ぁ…、っひ、やだ、やだぁ…!」


 ようやくこちらの本気を悟ったのだろう。赤司が本気で泣きそうな顔をする。小さな乳首を引っ掻くと息を詰めて体を跳ねさせる。ちゅるると吸い上げたら小さく声を漏らした。
 反応が返ってくるのが嬉しくて、しばらく同じ場所を弄り続けた。


「ひぁ、ふあっ! あお、み…いっ、ぁ」

「嫌がってっけど感じてね?」

「そ、んなこと…っ」

「どーだか。確かめてみっか」


 右手で乳首を弄りながら、赤司のスラックスのベルトを外す。上半身しか捩らせていなかった赤司だが思い出したように足をばたつかせる。青峰はそれを自分の足で押さえつけて、スラックスと下着を一気に脱がした。隠そうとくっつけられた膝を強引に割り開く。
 思わず口笛を吹きかけた。


「ちゃんと立ってんじゃねーか。意外と淫乱だな」

「ちが、あっ、ちが…! や、うううぅぅっ」

「何も違くねえだろ」


 震える体や、縛られた腕や、上気した肌や、涙と涎でぐちゃぐちゃで、ぐちゃぐちゃに歪んだ顔や、M字に開かれた足の間から見える立ち上がって蜜を垂らす性器や。赤司の全部が――髪の毛一本だって興奮材料だ。もっと乱れさせたくて後孔に指を突っ込む。


「あ゛っ、ぁ、や! ぬい…っぁ、あ!」

「思ったよりキツくねーな。…普通どんだけキツいのか知らねえけど」


 もしかしたら、今朝黄瀬とシていたからかもしれない。
 そう思うともちろん面白くない。動きが乱雑になる。ついでに指も一本増やした。
 奥の方にあるしこりを突くと、赤司の反応が変わった。一度大きくビクリとした後、一層体に力が入っている。


「ひゃあっ! あっ、…めっ、やめ…っ、そこっあぁぁっあっああ!」

「何かすごいことになってっけど…そんなにイイのか?」

「んぁあっ、ひや…っ、ぁ、も、むり、ぃ……! ふあっ、はぁぅ! や…ぬい、て、おねが…っ」

「…もうちょい」


 まさか赤司からお願いされる日が来るとは――と驚きながら、もっと赤司の乱れる様を見たい、と欲望が走る。しばらく弄って、自分が限界になってきたので指を抜いて己の性器を出す。ハアハア息を整えていた赤司の顔が白くなった。後ろへ逃げようとするのを腰を掴んで阻止する。


「やめ、やっ! それだけは……っあ、ひ、やあぁ…っはいって、こな、で…! やだぁ…っ!」

「っ、あっちぃな…」

「…みっ、あお、みねっ、うごか…ああぁああっ!」

「赤司…っ」

「んっ、あぁ…っ、やら、たすけ、……りょー、たぁ…」

「っ…」


 いやいやと首を振る赤司を無視して腰を振る。すると呼ばれた黄瀬の名前。付き合っていることは秘密だろうに、そこまで頭が回っていないらしい。
 ――苛立つ。黄瀬はここにはいないのに。


「っは……そーいやここ、黄瀬の部屋だったな」

「ひぃっぁ、や、っえ…?」


 赤司の性器を握って上下に扱く。当然、腰の動きは止めていない。自分も赤司も確実に絶頂に近づきつつあった。
 虚ろながら不思議そうにした赤司に悪い顔で笑いかけて、手と腰の動きを早める。


「イけよ。黄瀬のベッドで、黄瀬じゃない奴に抱かれて」

「ッ…! ぅ、あ、…あぁあっ、や! ひ、っく…りょ、たっ、ごめ、ぁ、やっ、ぁあああっ!」

「っく……赤、司…っ」


 きっと赤司と黄瀬は、このベッドでもいたしているだろう。赤司の中では罪悪感が一気に増えたに違いない。黄瀬との記憶をなぞって、黄瀬の匂いに包まれて。
 赤司が精液を放って、強くなった締めつけに青峰も精を吐き出す。最後の一滴までしっかり注いで性器を抜くと、収まりきらなかった白濁がシーツを汚した。
 一度汚してしまったなら、何度汚してもいいか、なんて。それはシーツのことか、それとも――。



* * *



『あー、黄瀬? お前のベッドにコーヒーぶちまけちまってよお。シミはシーツで止まってっけど。一応水で洗ったけど赤司が『出来るなら早いうちに洗濯したい』っつってるから、洗濯機使っていいなら言ってくれ。んじゃ』


 休憩時間にケータイを見てみたら留守電が入っていて。聞いたらそんな内容だった。青峰っちのうっかり屋さん、と思いつつ折り返しの電話をかける。留守電からそう時間は経っていないから、二人とも家にいるだろう。
 洗濯機の返事にイエスを出して、そのあとちょっと赤司に変わってもらおう――プツリと音がして、通話が繋がった。





END.









* * *
絶対ニラウンド以上やってますよねコレ。この後青赤→←黄になるのか黄赤←青のままなのか…。私としては青赤←黄エンドはなさそうな。それにしても青峰可哀想感がちょっと足りない。
これもアンケ参考に書いた奴ですが、上達していると…思いたい…です。文章力は書けば書くほど良くなる! とどこかで聞いたことが。

 

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