短編2
□手放す気なんて毛頭ない
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全中制覇後から、黄瀬の「遊び」は酷くなったように思える。今だって、向かいの校舎の教室にいる黄瀬は赤司の知らない女と抱きあっている。黄瀬の服は乱れていないが、女の方は少なくとも上半身が裸だ。
カーテンの陰に身を置き胸の痛みを紛らわすように息を吐く。痛いということは、まだ黄瀬が好きということだ。浮気ばかり、それも隠す気がないような浮気ばかりする男なのに。
カーテンから少し顔をはみ出させてみてみると、向かいの教室は空っぽだった。何となく、で先程まで不純異性交遊がされていた現場へ向かう。ゴミ箱に捨てられたティッシュ――に包まれているだろう避妊具に顔をしかめる。
「いや、避妊しているだけマシか……」
していなかったら本当に救いようがない。
アイツは何がしたいのだろう、と心の底から疑問に思う。隠しもせずに浮気をして、けれど赤司にもきちんと愛を注いで。かまってほしいのだろうか。
靴箱へと移動しながら、このことへの措置を考える。別れる、と言ってみてもいい気がした。そして黄瀬は焦ればいい、後悔すればいい――焦りも後悔もしてくれなかったら、本当に別れることになるだろうが。
「あ、赤司っち! まだ残ってたんスか。勉強?」
靴を履き替えていると、どこからともなく黄瀬が現れた。狙ったようなタイミングだ。付けているわけではないと思うが。
読書だと軽く答えて昇降口を出る。まだ上履きの黄瀬が「待ってくださいっス!」と言うのを無視して歩く。どうせすぐ追いついてくるのだ。
十歩は歩いたところで黄瀬が隣に来て、ペラペラと世間話のような話をする。今日は授業中紫原がお菓子の夢を見て、よだれで机の半分を埋めたとか、社会教師のヅラが風でずれたとか。
相槌を打ちつつ赤司はタイミングを狙う。話が途切れた瞬間、そこに自分の言葉を捩じこんだ。
「涼太」
「ん?」
「別れよう」
「……んん?」
黄瀬が立ち止まった。合わせて赤司も立ち止まる。どうしてコイツは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしているのだろう。そう言われる原因に、心当たりがあるだろうに。
驚いたということは、別れたくはないのだろうか。ちょっと嬉しく思いつつ言葉を続ける。お灸のつもりだった。
「浮気を許せるほど、僕は寛容じゃない。僕一人だけじゃ我慢できないなら――」
「…………ダメっス」
「は?」
嫌、ではなく、ダメ。その言い方に呆れようとして、しかし無理だった。
黄瀬の手が赤司の手首を掴む。振りほどけると思えない強さだ。強すぎて痛い。
赤司が離せと言うと同時に黄瀬が歩き出す。抵抗も無意味な力強さだった。赤司はそれでもしばらくは抗って、やがて諦めた。口では文句を連射する。
「涼太! 離せと言っているだろう! 大体どこに行く気だ……!」
答えはない。
モデルらしい長さの足が速く、大股に歩くものだから、赤司は小走りにならないといけなかった。ぎこちなく走るから息も上がる。
辺りを見回してみると、まったく見たことのない風景が目に飛びこんできた。夕暮れの中淡く光る看板は、ネオンだろうか。そんな看板がついたホテルがたくさんある。
黄瀬はその内の一軒に入った。当然赤司も入ることになる。
「涼太、何、ここ……何でホテルなんかに」
答えないまま、黄瀬が壁ぎわの機械の、たくさんあるボタンの内一つを押す。そして歩き出した。赤司にはわけが分からない。
少し歩いて、二階のある部屋に入った。黄瀬が自分と赤司、両方の鞄を床に放る。赤司の鞄はもぎ取られた。文句を言おうとする前に抱えあげられる。
「おい、涼太――わっ!?」
言葉の半ばで投げ出された。落ちた先はダブルベッドだ。スプリングが効いているらしく、赤司の体は軽く跳ねた。
顔をしかめて起きあがる途中、カシャッ、と音が鳴った。見ると、携帯をしまう黄瀬がいた。赤司が起きあがるのを邪魔するように覆い被さってくる。
「何撮っているんだ……消せ」
「嫌っスよ。赤司っち可愛いんだもん。ボタンきっちり留めてるクセにニーソ履いてエロいし、スカートの中が見えそうで見えなかったし、しかめた顔が可愛いし」
「馬鹿言うな。……ここ、どこだ」
「赤司っち知らないんスね。ラブホっスよ」
どんな外見かは知らなかったが、存在は知っている。赤司は息を飲んで後ずさった。数センチも行かずに黄瀬に捕まる。体を強張らせていると口付けられた。拒む間もなく舌が入ってくる。
「ふぅ!? んっ……んっん、ん、ぁ……ふ」
「あは、もう顔真っ赤だ」
「っ嫌だ、やめ――っぁ……」
しゅる、と手早くリボンがほどかれた。ボタンが外すのではなく引きちぎられ、嫌な音が鳴る。これでは外に出られない。
背中から上は上げていたが、そこも完全にシーツに押しつけられた。
「やっぱいいっスね、赤司っちの髪がベッドに広がるの。長いし、シーツに映えてキレイ」
「煩い。いいから離せ……!」
「やーっスよ。今日は赤司っちをいっぱい、おかしくしてあげるっス」
どこか狂ったような黄瀬の目に背筋が泡立つ。ようやく恐怖を感じた。
下着をずり上げられ、黄瀬の舌が小さな突起に触れる。
「ヤ……ッ! やだ、やめっ……ひ! やだ、ぁ……っ」
「知ってる? 赤司っちの体、すっげぇやらしいんスよ」
「あ、っひ、ゃあ、涼……太、はなしっ……」
「だって、ちょっと乳首弄っただけでこんなに感じんだから」
「っあう!?」
舐められていた箇所をカリッ、と、少し痛いくらいの強さで噛まれ、背中がのけぞる。
黄瀬はその後も赤司の胸に触れ続けた。ささやかな膨らみを揉んで形を変えたり、突起を捻ったり引っ張ったり転がしたり。突起がジンジン痺れ、同じ痺れを下に欲して腰が無意識に揺れた。
それでも黄瀬は胸を弄り続けた。
「や、ぁあん! や、やだ! や……っあ、ぁあ! はなし、……っや、も、そこばっか……!」
「胸大好きっスもんねー赤司っち」
「ぁ、や、ダメッ……ひアッ、ぁああ!」
「ね、この部屋、SMグッズもあるんスけど……使う?」
すぐに首を振る。その勢いで、涙がこめかみを流れた。黄瀬は残念そうにしながら、「ま、また今度でいっか」と恐ろしいことを呟いた。
「りょー、た……っねが、やあぁ……! むねいじんないで……」
「えー……しゃーないっスねえ」
黄瀬の手がシャツにかかり、あっという間に脱がされる。スカートも下着も取り払われ、残るは靴下だけという、ある意味全裸より恥ずかしい格好になった。思わず閉じようとした足を開かれる。
つぷん、と長い指の先が下の口に埋めこまれ、体が一度痙攣した。
「赤司っち、濡れ濡れ。嫌がってなかったっスか?」
「う、あッ……や、やらっ、……ひ! あ、ゃっ、だ、め! そこはぁ……っ!」
「あ、そっか。赤司っちは嫌でも感じちゃう淫乱っスもんね、ビショビショでも仕方ないっスよね」
「まっ、ーーぁ、あ! ひ! アッ、やぁ……っ! りょう、た、ゆび、はなし――っひぁあ!」
「え、だってこんなに膨らんでるっスよ? 触ってあげなきゃかわいそうっス」
「〜〜〜〜ッッ!!」
撫でられ続けた割れ目の上の秘豆を軽く摘ままれ、体が絶頂に追いやられる。余韻に浸っていると、今度はそこを舌が擦る。同時に先端まで埋まっていた指が入り口付近で抜き挿しを繰り返す。赤司は激しい刺激を逃がそうと身を捩り、頬をシーツに押しつけた。
「やっやら……! あぅ、あ、ひ……いやああアア!? あ! あんっ!」
「何スか、今のかわいー声」
「りょ、たっ! や、ぁ、ひ! そっ、こはぁ……! はぁぁっ!」
休む間もなく、ナカを虐める指は深くなり、増えていく。全てが赤司の一番感じるところを抉りに来て、それに悶えていると、あっけなく抜けた。
何も考えられずただ息をしていると、指が入っていた場所の入り口に熱いものが宛がわれた。何か違う――ぼんやり思った瞬間、ソレはやや強引にナカに押し入ってくる。
「っやアッアあぅ! あ、ぁ……っあ」
「ん、ちょっと広げ足んなかったっスかね……」
どこかでカシャ、と音がした。どこかで聞いたことがある音だが、どこで聞いたか思い出せない。が、ケータイをしまう黄瀬を見て血の気が引く。あは、と黄瀬が笑う。
「っやだ、や、消してりょうた……!」
「せっかく撮ったのに消すわけないじゃないスか」
「だ、だって、あァッぁ、そんなの――ひあ、あ!」
黙れと言うように突き上げられる。抵抗する力なんてほぼ最初から失っていた赤司は、されるがままに揺さぶられていた。その中で相変わらず違和感を感じる。いつもより感触がハッキリしているような。
「ね、りょ、たっ! な……か、へん……っ! なに、コレっ……」
「あ、気付いた? 今ね、生でやってるんスよ」
「ーー!?」
一瞬頭が真っ白になる。
生――つまり、避妊具無しで。
また血が下へ走る。シーツを命綱のように握りしめ、後ろに逃げようと腰を動かす。右手を左手に、左手を右手に捕まえられて動けなくなる。
「いやらっやらぁアッ! ぬい、ぬいてぇっぁ、やっ、いやぁっ!」
「すっげえ締めつけてくる癖に何言ってんスか。ほら、ココ好きでしょ?」
「ひゃぁぁっ、あっ、ひぃ! ……や、だ、やら……っあかちゃ、できちゃう……っいやぁああ!」
ドピュドピュッ――いつもはゴム越しに感じていた温かさが直接胎内を走る。ソレは子宮の入り口を叩いているように思えて、怖くて。逃げるように意識が遠退いていく。
「だって写真はいつか全消しされそうだし……でも、赤ちゃんなら赤司っちを繋げておけるっスよね? 大丈夫、責任とるっスから」
だから赤ちゃんできるまで何度も犯してあげる――視界が完全に暗くなる直前、ナカに感じる黄瀬が膨らんでいくのを感じた。
END.
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ヤンではなくゲスです。ヤンではなくゲスです。
ゲスといえば中出し……! となぜか思いつきました、いかがでしょう。赤司をいつもより喘がしてみたりも。
リクエストありがとうございました!