短編2

□気苦労が消えない話
1ページ/1ページ




「赤ちーん、今日お菓子こぼさなかったよ〜ご褒美のちゅーちょーだい!」

「あ、赤司っち赤司っち、オレ一回だけだけどショーゴ君抜かしたっス! キスほしいっス!」

「赤司君赤司君赤司君赤司君ボク今日は床とキスしませんでした赤司君だから赤司君のぷにぷにな唇をボクにください赤司君赤司君赤司君赤司君赤司君」

「ああ。分かったから順番にな」


 赤司が紫原、黄瀬、黒子の頬に唇を軽く押しつけていく。何でもないように笑う赤司を、キスをもらった三人が少し顔を赤くするのを、虹村はモヤモヤと嫉妬を抱えて見ていた。
 普通は「よそでやれ」としか思わないかもしれないが、嫉妬も抱えたくなる。自分の恋人が、自分から他の男にキスしているのだから。


「赤司ィ、堂々と浮気かお前は」

「違いますよ。ご褒美をあげてるだけです。オレもキスするの好きですし」

「キスはどう考えても浮気だろ……お前ホント止めろよソレ。喰われるから」

「唇なんて美味しくもないもの食べないでしょう」


 そういう意味じゃない。まったく、今までストイックに生きてきた人間を恋人にすると、その鈍感さに気苦労が堪えない。そして誤解だ。赤司の唇は甘い。
 こっちは「ご褒美」を見る度、気が狂いそうな嫉妬に苦しんでいるのに。見ていない時も、今この瞬間「ご褒美」が行われているんじゃないかと気が気でないのに。
 以前、じゃあオレも同じように誰かに「ご褒美」やってやろうかと言っても、「嫌ですけど、オレもやっていることなので我慢します」と悲しそうに言われた。元々実行する気はなかったが何故か罪悪感が湧いたのを覚えている。


 練習に戻ろうとする赤司の肩を掴んで振り向かせる。怪訝そうにした彼の半開きの唇に噛みついて。

 その時は、それで何とか自分を落ち着かせたのだが。



「赤司、お前皆にゴホービやってんだろ? オレにもくれよ。喧嘩も遅刻もしなかったぜ?」

「喧嘩も遅刻もしないのが当たり前なんだが……まあいい。今回だけだぞ」

「はは、カレシいんだろ?マジウケるわ……ま、そんじゃあいただきまーす」

「は、ちょ、待て。お前がするんじゃな、ん、んんっ」


 思わずドア陰に身を潜めていたら、いつか来るんじゃないかと危惧していた事が起こってしまった。真っ白になった頭に赤司の息継ぎのような呼吸が響く。
 我に返ると同時に半開きのドアを完全に開けた。驚いてこちらを見る灰崎を押しのけ、壁に押しつけられていた赤司の腕を掴んでドアへ歩く。赤司はしどろもどろに単音を発していたが何とか鞄を手に取った。それを横目に確認し、いよいよ歩調を速める。


「に、にじむら、さっ、速……っ」


 普通に走るなら何キロも行ける赤司だが、歩調を無理に合わせているからか早くも息切れしている。
 虹村は振り向かずにただ赤司を引っ張り歩いた。瞼には、部室に闖入した瞬間に見た赤司の顔が張りついている。赤くなった頬も唾液で濡れた唇も、涙に浸された瞳も、自分だけが知っているものだったのに。
 自宅に着いて乱暴に靴を脱ぐ。赤司が脱ぐのは待てず、抗議の声を無視して横抱きにし、階段を上った。自室のベッドに赤司を落とす。


「何なんですか……っ、というか、靴」

「気になるんなら足上げとけ」

「やっ、脱がしてください……!」

「おーいいぜ」


 ただし脱がすのは靴ではない。
 赤司のきっちり締められたネクタイを引き抜いて床に放る。力なく着地したそれを見て、お仕置きならこうした方がいいだろうと思いつく。思いついた通りに、自分のネクタイで赤司の両手首を一纏めに縛り、ベッドの柵に結ぶ。赤司が身を捩ってほどこうとするが、それでほどけるほどヤワには結んでいない。ただでさえ、足をベッドに付けられず上手く力が入らないだろうに。


「虹村さん、これっ」

「ああ、終わったら外してやるから」

「は――――んーっ、んぅ、んっ」


 口を塞いで中を掻き回す。どこが弱いのか、感じるのかは熟知している。赤司が窒息になる寸前に解放すると、さっき灰崎にされたより色っぽい顔になっていた。より頬が赤く、涙は頬に、唾液は顎まで流れている。上げ続けることに疲れたのか、足は虹村の腰に絡まっていた。
 シャツを乱暴にはだけさせると、小さなピンク色の乳首が顔を覗かせた。少し痛いくらいに押し潰すと悲鳴のような嬌声が上がる。


「ぃた――っや、にじむ、……ぁあっ、これ、とっ……」

「嫌だ。あんだけキスをご褒美にすんの止めろっつったろ。いつかああなるって思ってたから言ったってのに……」

「やめ、っやぁ……! いた、ぃ――そ、なに押しちゃ……っ!」

「注意聞かなかったからお仕置き。だからあんま優しくはしねぇよ」


 口に含もうと一旦指を離す。真っ赤に熟れて腫れた二つの突起は、いつもより勃ちあがっている気がした。


「なあ、乳首いつもより勃ってっけど。痛い方が感じんのか?」

「ぇ、あ……っちが、ぁ、――いひゃぁぁあっ!」

「ほら、やっぱ感じてる。お前が変態だとは思わなかったわ。今度からも痛くしてやるよ」

「や、ですっ、……ひぅ、ぁ、はっ、あぁあっ、ぁっああ!」


 意外なのは自分の中にあった嗜虐思考もだったが、そこは置いておいて先へ進める。
 強めに噛んで、舌で潰してもそこは弾力を失わない。


「何しても勃ちあがってくんな、お前の乳首。もっとして、って言ってるみてえ」

「ひんんッ、ぁ、ふっ、……そんなんじゃ、ないですっ……も、やだぁ、そこっ、や」

「ふーん――んじゃ、こっちイくか」


 腰に絡みついたままの足を開かせ、ズボンと下着を脱がせてまんぐり返しの格好にする。恥ずかしがって嫌がって首を振る赤司は、その仕草がこちらを煽らせると分かっていないだろう。
 赤司の格好は変えさせないまま、手を蕾の両脇に置く。両方の親指で蕾を開き、舌をナカに突き入れた。


「ッッ――! や、やらっ、ぁあ、っひ! そんなとこッぅアッ、あ! 抜い……」

「そう言ってもなァ、お前のここ、旨そうにヒクヒクしてっから。お前だって、ここに欲しいんだろ?」

「ちが……ほしくな、です」


 ならばと、足を元に戻させる。靴は脱がせて、裏側を上にして床に置いた。
 いまだに勃つ乳首を手のひらで磨り潰すように押したり、指で弄ったりする。もどかしいのか、赤司の腰が揺れている。引っ張っているのだろう。手を縛るネクタイや引っ張られている柵が鳴った。


「ひあ……っ、ぁ、はぁあ……ん」

「…………」

「ゃ、ぁあっ! ひ……っふ、ひゃんっ、あ、や! ひぁう――にじ、むらさ」

「ん?」

「も、いきたい、です……っ」


 腿や膝を擦り合わせたいが虹村が間にいるから出来ないのだろう。赤司の横脛が脇腹に当たっている。
 待ってましたと虹村は口角を吊り上げた。一層強く乳首を捻ると、目の前の体は一際大きく跳ねる。脇腹への圧迫も一瞬だけ強くなった。


「気持ちいいか? 赤司」

「ぁ、あ……ふ、ひぅっ」

「ちゃんと言えよ、乳首気持ちいいって」

「はっ…………ぁ、ち、ちくび、きもち――んっ」


 舌では不十分かと思い、指でもある程度慣らす。十分なところで指を抜き、とっくにそそり立っていた自身を入り口にほんの少し含ませた。物欲しげにひくついていて、挿れたい衝動に駆られたが、堪えた。


「んぁ……っあつ、……にじむらさ、ん、はやく、いれ――っ」

「ねだるならちゃんとねだれよ。さっき気持ちいいって言った時みたいに」


 分からない、と赤司は首を振った。どうしてほしいか言うだけでいいのだ、とアドバイスをやる。ついでに、焦らすように入り口付近で抜き挿しを繰り返した。その度に小さく喘ぐから、ますます大きくしてしまう。


「…………にっ、にじむら、さんの、っァ、ほし……です」

「オレの何が欲しいのか分かんねーけど」

「――ひっ、く、ぅ……いじわる……っ」


 そんな涙だらけで敵意のない睨みでは、煽るだけだ。
 ここでスルーするのはさすがに良くない。ちゃんと言ったらご褒美やるからと、宥めるのとはまた違う口調で言った。赤司は数度しゃくりあげながら、つっかえつっかえ言葉を押し出す。


「――にじ、むら、さん、のっ……っひ、……ち、ふぁあ……! ちん――ぽ、ほしッ、です――ふぇっ、ぁぁああっ!」

「ん。よくできまし、たっ」


 男にしては細い腰を掴んで、自分の腰をめちゃくちゃに振る。もうイキたいと啼く赤司に、最後に聞く。


「――もう、他の奴にキスしないか?」

「っ、ひゃ、い……しませ、んっ! ぁっ……も、にじむらさん、だけ――は、はひっ、ぁ! ひぁッぁああッあ!」

「っ、く……!」


 コクコク頷いた赤司の性器を今回初めて触ってやると、あっという間に達した。その際の締めつけで自分も、赤司のナカに白濁をぶちまけた。
 ネクタイをほどきながら、虚ろな目で呼吸する赤司を見下ろす。意識も虚ろそうだ。もうしないと言ったことを、覚えているだろうか。不安であった。



* * *



「赤司っち、ご褒美!」

「はは、オレはご褒美じゃないぞ黄瀬」


 ――きた。

 練習もしながら、こっそり赤司と黄瀬の方を見る。果たして赤司は、ご褒美を与えるのか与えないのか。
 黄瀬が、やりやすいようにと屈む。取り敢えずイケメン殴りたい。赤司は拘束の痕を隠すリストバンドをつけた手首の先の、手を伸ばし。


「――――……え、あれっ? ほっぺちゅーは?」

「金輪際ない」

「ええー!?」


 残念、でも嬉しい。そんな感じに、黄瀬は撫でられた頭を撫でた。
 虹村はホッと息を吐く。赤司は覚えていたようだ。これで心配は減る。
 ふと、赤司がこちらを向いた。何だと視線を外せずにいると、照れ臭そうに微笑みかけてくる。


「……あれはあれでヤベーな……」


 虹村は片手を上げて応え、頬に上がった熱を下げる為、外周へ向かった。





END.









* * *
そんなこんなで言葉責めです。最近ネタギレぎみなので助かってたりします……ありがとうございます。複数プレイじゃなかったのにやけに裏が長かった気が。
拘束も言葉責めも難しいですね。ここを読んで初めて「え、これ言葉責め要素あったの!?」って方がいましたらスミマセン。
リクエストありがとうございました!

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ