短編2

□小ネタ
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「生まれ変わりなんて、くだらない」

 赤ちんが「くだらない」と言う時の本心は、二種類ある。

 まず、ほんとうに、心の底からくだらない、と思っている時。峰ちんのおっぱい談義などが、これに当てはまる。そういう時赤ちんは、とうめいな目をして言い捨てる。

 次に、ホントはそれが気になってしかたない時。仲間とやるバスケとか、青春とかが、当てはまる。そういう時赤ちんは、目をしかめて吐き捨てる。

 今赤ちんは、目をしかめて吐き捨てた。だからオレはびっくり。赤ちんは、心の底から生まれ変わりをくだらないと思っている、と思っていたから。
 赤ちんがホントをかくしている時は、オレがそれをどうにかする。オレは赤ちんを自分のあぐらに乗っけた。

「どうしてくだらないの?」

「来世の自分が、今の自分の好きなものを知らなかったり嫌っていたり、好きじゃなかったり忘れていたら怖い、と言った奴がいたんだ。どうせ、怖がってたことなんて生まれ変わったら忘れるのに」

「だれ?」

「記憶がなく、見た目は同じでも体が違う時点で、生まれ変わりと生まれ変わり前の人間は別人だ。たとえ、体に同じ魂が宿っていても」

 赤ちんはオレの質問をきれいにスルーして、話を続けた。質問に答えてもらえないのはなんとも思わなかったけど、そのあとの言葉には、またびっくりした。
 どうやら赤ちんは、生まれ変わりを信じているらしい。てっきり「興味はあるが生まれ変わりは信じない」的なくだらない、だと思っていたのに。赤ちんは、ひかがくてき、なものは信じてないと思ってた。
 赤ちんの話は続く。後ろから赤ちんをかかえているのを後悔した。顔が見たい。

「別の人なんだ。体が違くて記憶もないんじゃ、魂と見た目が同じなだけなんじゃ、別人なんだ。別人とした約束を別人に守らせようとするなんて、馬鹿だ」

「うん…」

「生まれ変わっても愛し合うと約束しても、生まれ変わったら忘れるんだ。生まれ変わったらリセットされるのに、生まれ変わりを意識するなんて。まったくもってくだらない」

「うん…」

 どうしよう。話が難しくてついていけない。
 ふるり、と赤ちんが震えた。ここは寒くないはずだけど。


「『前』を覚えている僕は、おかしいかな」


 前、ってなんだろう。初めて聞く一人称にまばたきする。
 長い間我慢していたものを、はきだしていいか迷いながらはきだすように、赤ちんは、言う。

「もしかしたら僕の思いこみなんじゃないか、って、病気なんじゃないか、って、ずっと怖かった」

「…?」

「でも去年お前と会って、思いこみでも病気でもないって分かった」

「なにが…?」

「敦」

 名前を呼ばれたのは二度目だ。
 さいしょは、入学式で、赤ちんとはじめて会った時。あの時オレは、どうしてオレの名前を知ってるの、と聞いたのだっけ。二度目の今回は、なにを言おう。
 オレが返事をするまえに、赤ちんが吐き捨てた。


「生まれ変わりなんて、くだらない」





(拍手御礼文2)



(「うまれかわってもあいしあおーね」)
(言い出しっぺが忘れてどうする、馬鹿。)



 
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