短編2

□小ネタ
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 子供が欲しくないかと訊ねると、紫原は難しい顔をした。意外なような、意外でないような――どちらなのか分からない気持ちになりつつ、赤司は答えを待つ。


「…………赤ちんがほしいなら、つくってもいいよ。こども」
「こればっかりは、僕を理由にしてはいけないよ。敦の気持ちを正直に話してほしい」


 紫原はますます難しい顔をする。訊いた瞬間から何となく分かっていたが、子供がほしくはないようだ。ほしくはない、より授かりたくない、という方が正しいか。
 顔が難しくなっているのは、赤司が子供を欲しがっているのを理解しているからだ。だというのに自分は欲しくないと言うのを嫌がっている。


「……こども生まれたら、赤ちん取られるから」
「僕はいつでもお前のものだが?」
「そうだけど! あっさり言ってくれて嬉しいけど! でも、赤ちんがオレをかまう時間は減るし、赤ちんはこども優先するだろうし」
「……否定はできないな」


 うううぅ、と唸り声。自分が唯一で絶対の一番でなくなるのが嫌らしい。いつまでも子供っぽい紫原が、赤司にはいつまでも愛しい。


「たとえば赤ちんとこどもが死にそうになってたら、オレは赤ちんを助けるよ」
「僕はきっと、こどもを助けようとするな」
「だろうね。だから結局、助かるのはこどもなんだ」
「……そしたら、子供を愛せるかい?」
「逆でしょ。恨むよ。こどもがいなかったら赤ちんが助かったのに」


 不吉な話をしていても詮無いと首を振る。紫原の愛はいつも、赤司が思う以上のものだ。
 赤司は口を開く。子供が欲しい理由を話す為に。今ならまだ、願いを二人で生きていく方向へ変更できる。現時点で紫原は、赤司の唯一無二の「一番」なのだから。紫原の意思を変えるつもりでいながら、自分の意思を変えてほしいとも願っていた。





(紫原が折れたとして、話した通り子供のせいで赤司が死んで、子供を恨むけど赤司にそっくりで子供が赤ちんだと勘違いしだしらバッドエンド。
ぶっちゃけ、死にそうになっても赤司無双で二人とも助かりそうですけどね!)



 
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