短編2

□小ネタ
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(動物死んじゃう描写あります注意です)





 昔、犬を飼っていたんだ。四つの誕生日に父からもらった。生まれて一ヶ月の犬だ。小型犬で、フサフサの毛で、くりくりの目で。口を開くと笑っているように見えた。話しかけるとよく首をかしげたな。喉を撫でられるのが特に好きだったみたいで、背中を撫でたらすぐに仰向けにひっくり返った。オレが幼稚園から帰ると「おかえり」って言うみたいにケージの中でピョンピョン跳ねたよ。無言で。――ああ、吠えないよう躾けていたからな。
 世話は全部オレがした。食事も散歩も躾もトイレも。頭のいい子で、教えたことをすぐに呑みこんだ。
 オレはあの子が大好きだった。オレより早くに死んでしまうだろうと分かっていたから、あの子を可愛いと思うと同時に悲しかった。すぐに死んでしまうから、たくさん幸せにしてやりたいと思っていた。……ん? ああ、まあ確かに、四歳児にしては大人びた考えかもな。
 あの子を可愛がって可愛がって、十何年くらい先の別れを怖がりながらも幸せだった。けどな、あの子は結局、一年くらいで死んでしまったよ。
 父に噛みついたんだ。オレが止めろと言っても唸って吠えて噛みついて。あの子がオレに逆らったのは、アレが最初で、最後だ。手を噛まれたままの父が壁に叩きつけたら動かなくなった。


 だから、言うことを聞かない犬は嫌いなんだ。


 だから、お前をオレの犬にはしない。今は何でも言うことを聞いているが、いつか聞かなくなるかもしれないから。


 ――だから、諦めろ。





(お相手は紫原か黄瀬辺りかと。赤司様の犬になりたいけど断られた話。
実はお相手さん、赤司の死んじゃった愛犬で、赤司の傍にいたくて人間になって戻ってきました、っていうのもアリです)



 
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