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□ラブコメもどきの文化祭
九月某日、帝光中学では文化祭一日目が行われていた。残暑がいまだに地上を焼くが来客は大勢で、賑わっている。
そんな中で特に大盛況を誇っているのは、二年A組。出し物の登録名は「コスプレ喫茶」。説明文は「生徒がメイドかウェイターにコスプレしています。女装有り!」。女子の腐った切望により成り立っている。
現実では滅多に見ない出し物に、二年A組は大繁盛していた。
中でも客からの絶大な人気を得ているのが、
「お帰りなさいませご主人様。客だからってもてなされて当然の態度をとるな。頭が高いぞ縮め」
数少ない女装担当の一人、赤司征十郎である。望まない女装により機嫌が下降ぎみで、言葉と態度に棘がある。
憮然とした無表情のまま注文を受け、厨房係のいる隣の家庭科室へ行く。そこでは数人の女子と紫原がケーキを作っている。接客はしない為、制服姿だ。
「ショートケーキ二つ追加」
「りょーかいー。できたらもってくー」
摘まみ食いするなよ、と冗談混じりに紫原に注意し、教室に戻る。扉の脇で教室全体を見回し、客の多さに目眩を覚えた。午前でこれなら昼時にはどうなるのか。まだまだ抜け出せなさそうだ。
メイドさーん、と呼ばれ、返事をして早歩きに客の元へ向かう。ここ目当てで来た感満載のいかにもな男性客は、赤司を上から下まで見てから「男の娘?」と聞いてきた。頷くと、脂ぎった笑みが深まった。赤司の左胸についたネームプレートを読んで「赤司ちゃんか」と呟く。
「僕、赤司ちゃんをお持ち帰りしたいなあ」
「テイクアウトは受け付けていない。それとちゃん付けするな」
「ふおお! 女装男の娘でツンデレ! 萌ええええ!」
「ひっ!? 何だ気持ち悪い…っ。おい、離せ…!」
腕を掴まれて引っぱられる。足を踏ん張って抵抗するが、大人と中学生、力の差がないわけなかった。簡単に引き寄せられて腰に手を回される。鳥肌が立った。
- 耐える
- オヤコロ
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