妖怪ヒーローアカデミア2

□104話
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インターンから帰ってきたいっくんの様子がおかしかった。
心此処に有らずな様子で朝のジョギングも1人先に行ってしまい、かっちゃんが1人で無駄に対抗意識を燃やしていた。授業で当てられた問題にも答えられていなかった。

夜、今日も妖魔界に行って遅めに寮に帰ってきた。大浴場から出て自分の部屋に戻ろうとすると、窓の外で1人筋トレをするいっくんを見つけた。

『オーバーワークは身体に悪いよ。』

「霊和ちゃん…、」

筋トレを止めさせ、食堂から持ってきたお水をいっくんに渡す。お礼を言いながら近くにあったタオルで汗を拭く。

「ちょっと焦っちゃって…。」

『インターンで何かあったの?』

「うん…。」

インターン先でどんな事件を取り扱ってるかの詳細は機密事項で話せない。しかし大雑把にだが話してくれた。

探っている組織と顔を鉢合わせてしまったらしい。
そこで組織と関わりのある子どもに助けを求められた。しかし事件解決のために何もすることができなかった。

「目の前で助けを求めてたのに…。助けられなかったのが悔しい…っ。今すぐ助けに行きたいっ。」

子どもの事が一日中頭から離れなかった。ミスを連発してしまうし何も出来ない焦燥から筋トレをすることで紛らわせていた。

『……私も助けたい人がいるの。皆にとって大切な人。
何処にいるかもわからない。生きてるかもわからないけど…。』

フゥ2やエンマ大王の必死な表情を思い出す。オールマイトから言われた時のフゥ2の絶望の顔、エンマ大王にその事を知らせた時の重い顔。あんな顔をさせたくない。

「そっか、一緒だね…。」

『うん。
だからいっくんの焦る気持ちがとっても分かるよ。
今も何かされてるんじゃないかとか、助けを求めてるんじゃないかとかいろいろ…。

でも1人で焦っても助けられる訳じゃないって教わったから。
場所を調べて万全な準備をしてから助けに行くの。私達に有利に働くように。失敗なく絶対に助けるために!』

今日も妖魔界に行ったのは強い妖怪に手を貸して貰いに友達になるためだ。強い妖怪はそれ故に個体も少なく他者との関わりも少ない。探すだけでも一苦労している。それでもマオさんを助ける為に妖魔界中を走り回っている。

「…うん、そうだね。…そうだよね。
僕も言われた。
絶対助けるために今は我慢しろって。」

『そうだよ。だからいっくんも万全の準備をしなくちゃ。
ほら、もうトレーニングはおしまい!』

座ってたいっくんの腕を引っ張って立たせる。いっくんに渡していたコップも受け取る。

「…?あれ?誰もいないんだね。」

いっくんは私の周りをキョロキョロと見回す。

『さっきまでお風呂だったからね。でも誰も一緒に入ってくれなかったの…。』

ジバニャンなんてお風呂って言った瞬間寝てしまった。

「良かった…。」

『え?』

「な、何でもないよ!(家族だって言われてもフゥ2も男だから一緒には入れさせたく無いなんて言ったら困らせちゃう…。)さ、僕もお風呂入って寝ようかな!
ありがとうね、霊和。相談して少し気分が晴れたよ。」

お休み!と言って早々に行ってしまった。
ポツンと1人残された私はどうしたのかと頭を悩ませたが答えは出なく、トボトボとコップを返しに食堂に戻った。




R5.09.18
 

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