狩人×OP
□8.行きはよいよい帰りは
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「若旦那達が無事魚人島へ出航出来るときまで俺達が手足となるからよ!!!」
そう言うと男は慣れないウインクを無理矢理している様子を一歩引いた所で半眼になって見ていた。
「あの人は?」
隣にいたサンジに聞く。
「あー…勘違いが激しい奴とだけ言っておこう……」
「十分 分かったよ……」
きっと話が少しばかり通じないかわった人なんだろう。
その人は牛(?)に乗って何やらワケの分からない事を叫びながら去って行くのを見送る。
レイリーというらしいおじさんが海賊王、ゴールド・ロジャーについて俺達に話している最中だが、正直言って今の俺には全くと言って良いほど耳に入ってこなかった。
この時代を造り上げた海賊の王はなしは気になる。
しかし今は海賊王の話よりも電話の男の話していたキルアの兄、イルミのことで頭がいっぱいでそれどころではない。
あの時男は確かにこの島にイルミが来ていると言った。
だとしたらこの島を手当たり次第に探すという愚かな事はせずあの時のようにアレを使うだろう。
アレを使えば必ずキルアを探し出し見つける事は容易い。
そうなるとここも安全ではないし、見つかるのも時間の問題。
「………どうする」
「何がだ?キルア」
「ッ!……いや、何でもないよ」
心の中で言ったつもりがどうやら声に出してしまったのを拾われたらしく何でもないと紛らわすと、
そっか、とルフィが頷いてレイリーの話に集中しているのを横目に今度は声に出さないように細心の注意をはらい、今出来る最善の策を幾つかねる。
と、その時だった。
ゾワッ
前にも体験したことが有る、全身駆け巡るこの嫌な感じはおぼえが有り過ぎて眉間に皺が寄るのが分かった。
周りを見渡したがどうやら誰も気づいていないようで、話に聞き入っている。
キルアの予想は確信にかわった。
ーーこの島、シャボンディ諸島にイルミが居る。
これは本格的にヤバい事になった。
自分の事情で彼等を巻き込むのは戸惑われた為、巻き込まない為にちょっと外に行ってくるわ、とドアに向かう。
「何かあったのか?」
出て行こうとするキルアに気づいたゾロが声をかける。
急なキルアの行動に皆が一斉に視線を向け、不思議そうにみる。
「ちょっと用事が有ったの忘れててさ〜アルカの事ちょっと頼んでいい?あ、何か急遽決まった事が有ったらこの小電伝虫に電話して!」
「それは良いが、オメェ今海軍がうろついてんだぞ?!」
「今出るのは危ないんじゃないか?」
アワアワしだすウソップとチョッパーに大丈夫だって!番号ここに置いとくなーと応えるとじゃ、アルカの事頼んだよっ!と言うとキルアはドアの向こうに消えて行った。
「本当に大丈夫かぁ?彼奴」
「確かに少し心配ですね…」
「弱くはねぇーだろうがな…」
「でも本当にどうしたのかしら…」
「それより彼の言う用事ってなにか気になるわ」
心配した顔でキルアが去って行った方をじっと見つめる一同。
レイリーだけはキルアが何故出て行ったのか分かっていた。
あの態度からして知っている気配なのだろう。
「(彼はきっと君らを巻き込みたくないからここを出て行ったんだろうね……)」
あの時の不穏な気配にはレイリーも感じ取っていた。
用事が有るというのはあながち見違っていないが。
出て行った本当の理由は彼等を自分のいざこざ、簡単にいうと自分が何とかしなくてはならない問題と言ったところだろう。
に巻き込まない為。
本当に何でもかんでもあの小さい背中は背負い込もうとしてしまう傾向があるようだ。
揃いも揃って一時の仲間といっても仲間だ。
少しは頼っても良いのではないだろうか。
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ぼったくりバーと書いてあったあからさまな看板にうわぁ、と思ったが前を向き森に入って行き、気配の元に向かう。
暫く進むと奥の方からちらほら数人の気配がした。
10、いや20人以上か?
あの時よりは大分ましだが言っておくがここは自分達の世界ではない。
むやみやたらに能力を使うのは良くないと思うが、イルミからしたらそんな事はさほど気にする程でもないんだろう。
「兎に角見つけ次第とことん倒すしかないよな………メンドくせ」
これだから兄の能力は嫌なのだと一人ごちるキルア。
森の奥の方に行くにつれ、その気配ははっきりしたものとなる。
「思ったよりいるなー…」
キルアの予想通り軽20は超えていた。
「こんままにしてたら後が面倒臭いしなー…」
ちゃっちと終わらせるか…
キルアは関係無い者を殺してしまうことを苦く思いながらもこうなった者はもう助からない事を随分前から承知しているので彼等を楽にする為に手際良く殺していく。