狩人×OP
□14.ようこそ×××へ
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見るだけで吐き気がしそうな程どす黒く薄気味悪いその穴は予想通り現れた。
そして来たときと同じようにそこにあらがうことなく落ちる。
穴から落ちて随分たった頃、奥の方から段々明るくなっていくのをが見えて出口が近いことを悟る。
辺り一面光に包まれて暫くして光がおさまったのを見計らって眼をゆっくり開けると、そこにはイルミが海賊の世界に落ちる前に居た場所ーーーではなく身に覚えのない部屋だった。
どうやら自分が海賊の世界にくる前に居た場所に戻るとは限らないらしい。
それにしてもどこだここー…
とりあえずここにいても何も始まらないので部屋を見渡して扉を探す。
「有った有った、」
外に出ようとドアノブに手をかけようとしたがそれは叶わなかった。
何故なら、
勝手にドアが開いたからだ。
勿論ポルターガイストじゃなくれっきとした人の手によってだ。
『……』
ガチャンッ
「……」
ドアを開けた人物をどこかで見たことがあった。
てか、確実に知ってる奴だ。
だってドアの向こうで何かブツブツ言ってる声は明らかに知っている声で、
『イヤイヤイヤ、え?は?なんでこんな所にアイツが居るんだ?』
扉越しに聞こえる気味の悪い独り言に白い目を向けてしまうのは仕方ないと思う。
ずっとこのままほっといても良いがそれだと状況が進まないのは分かりきっていることなので相手に当たる可能性があるにも関わらず何の迷いもなく思いっ切り開ける。
バンッ
「うおっ!!?」
「外でブツブツ言うの止めてよね」
「ここ俺に宛てられた部屋なのに何でお前が我が物顔でこの部屋に居るんだよ。明らかに不法侵入だろ」
「盗賊が何言ってんの。そんなの今更でしょ」
この時当たれば面白かったのになんてこれっぽっちも思ってない(嘘)
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「へぇ、イルミも大変だったな」
「そうなんだよ。ま、キルに会えただけでなく話出来たから別に良いけどね」
ボソッ
「……イジメたの間違いだろ」
「何か言った?」
「いや何も」
適当な椅子に座って寛ぐと、早速本題に入る。
「それよりさ、ここどの辺?俺が最初に居た場所と全然違うし」
「それは当たり前だ。お前の知らないとこだからな」
しれっととんでもないことを言い放った本人は何やら袋から出すと、それを食べ始める。
それを見たイルミは男の返答も気になったが何より目の前の食べ物に目が自然といく。
そのことに気づいた男はそれを隠すようにして庇うと、
「……やらないぞ」
「いらないから。君もいい加減そればっかり食べてあきないの?」
「何言ってんだ!あきるなんてとんでもない」
「あぁそう、どうでも良いけど“も”ってことは君も?」
イルミの言わんとしてることが分かったのか男は食べるのを一旦止めて話を再開する。
「あぁ、でも今回はお前で良かったよホント」
「誰と一緒だったの?」
何気なく問いかけると思いっ切り顔をしかめられた。
「365日変態野郎だよ」
その言葉と男の表情の意味にあぁ、アイツね。とそれを理解したイルミは納得する。
「もうアレは最悪だったね!除念が出来たとおもった矢先に穴に落ちてよく分からない所に来たかとおもったらいきなりアイツは俺に攻撃してくるは周りからは注目の的になるはでホント最悪だよ」
「まぁ、ヒソカだから。でも君も除念終わったら約束ほっぽりだして直ぐに逃げたんでしょ?おあいこじゃん」
「当たり前だ、一々約束事を守る盗賊がどこに居る」
それもそうだけど相変わらずその外道っぷり歪みないな、と支局どうでもよさそうに答える。
「でも俺さ、こう一週間近く家に帰らないとなると正直マズいんだよね…」
「?何だイルミお前気づいてないのか?」
「何のこと?」
溜め息混じりに吐き出した面倒臭そうな言葉に男は意外といった顔をするが直ぐにいつも通りの(イルミからしたら)胡散臭い笑顔を浮かべる。
「俺も偶々ここに来る前の世界で気付いたんだけどな。俺達がここでたとえ1ヶ月いようが一年いようが俺達の居た世界は1日所か1秒たりとも時間は進んでないぞ」
衝撃的な事実に何言ってんだコイツとうとう頭やられたか。というとてつもなく失礼なことを言いたげな目で見ると、
「嘘じゃない。何なら自分の携帯を確認してみたらどうだ?」
「携帯?」
施すように言われ、言われた通りに携帯を開くと驚いた事に時間は自分が落ちた時の時間帯から全く動いてなかった。
もしや携帯が壊れてるのかも……とも思ったがそれは有り得ないなと思い止まる。
こんな事にすら気づかなかったなんて冷静でいたつもりでも自分は思ったよりも自分の身に起きていることに案外困惑していたらしい。
困惑しているイルミを余所に、食べ終わったのかそれを片付けるために立ち上がりゴミ箱に捨てると、外を見渡せる程のかなり大きい冊子に近づくとカーテンをさっ、と左右に開く。
外は遠くまで見渡せるほどで、イルミの予想からして20階近くはあるであろう高層満マンションだとわかる。
その冊子の前に立つ男、クロロに焦点を合わせると同時にクロロが口を開く。
「何はともあれここで会ったのも何かの縁だ。…………いつ帰れるか分からないがマフィアの世界へようこそ、イルミ」
外はもう夕方なのだろう。
茜色に染まる空をバックに両手を広げて先程イルミが質問した答えと共に歓迎の言葉を告ぐクロロは妙に様になったいた。
その光景がイルミの感に障り、今出来うる限りの精一杯の嫌みをおみまいしてやる。
「海賊の世界の次はマフィアの世界、ね。ホント勘弁してほしいよ…………後クロロその気障ったらしい言動まるでヒソカみたいだよ」
イルミの嫌みに無意識の行動だったらしいクロロは広げていた両腕を肩の高さまで上げて心底嫌そうな顔をしてやめてくれ、と唸る。
どうやら効果はてきめんなようだ。
不機嫌なクロロから視線を逸らしてこれから面倒臭いことになりそうだ、と異様に広い部屋の天井を見上げる。
「この調子だと近々ヒソカも来そうだよね」
「冗談でも止めてくれ、お前が言うと実現しそうだ」
「俺のカンって結構当たるんだよ?」
「じゃあ俺はアイツがここに来る前に居た世界で死ぬ事を祈っとくよ」
「それは見物だね」
「そうってくれたら俺としても大歓迎だがな、」
イルミの冗談で言った言葉がまさか現実になるなど今の二人には知る由もない。
アトガキ→