狩人×OP
□15.理由
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作戦通りキルアを囮にしてエースをすくい上げるように掴むと言われた通りにオヤジの隣に着地すると同時にキルアがアルカに指示を出す。
そしてアルカではなく、【ナニカ】とキルアに呼ばれたその子供は少し緊張気味だった少女が嘘のようで、ーー今は確かナニカだったか、
の声はこの緊迫した戦場で異様なほどに響く。
性格こそそこまでの違いは無いものの、ナニカからは禍々しい何かを感じる。
その何かが分からないからどう表せば良いのか分からずに只アルカとキルアの次の行動を待つ。
キルアとはここで初めて顔を合わせたばかりだったが、それでも彼がどれだけ妹のアルカを大切にしてるかが今までの言動を見ていれば誰だって分かる。
だからだろうか、キルアが命令口調でアルカ叉はナニカに対しての言葉使いは少しばかり信じられないものだった。
と、そこでキルアが言い終わると同時に寒気がするほどの雰囲気がアルカから流れて来たと思ったその時。
「あい」
返事ともとれる言葉が耳に届いた瞬間ズシッと体に圧力がかかったように重くなる。
「一体…」
何だと続く筈だった言葉は体に圧力のようなものが掛かり、次に思わず眼を瞑る程の光によって途絶える。
眩しい光は直ぐに消えて、恐る恐る目を開くと信じられない光景が写った。
「…………どうなってやがんだ一体」
「あれ……、何でだ?確か俺怪我してた筈じゃ…」
と自分の傷の有った箇所を見る男と怪我した自分の腹辺りを撫でている男に周りは唖然とする。
マルコ自身もあまりに信じられない出来事に等々幻覚を見るほど頭がおかしくなったのか?と自分の顔を思いっ切り抓るってみるが、
「(痛い……)」
ってことは夢じゃないのか、と思った途端今にも死にそうだった大事な家族の末っ子と海軍によってやられた傷がすっかり無くなった偉大なる男の姿を眼にしていい年したオッサンのくせに今にも泣いてしまいそうになった。
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イルミの弟なので何かしらやらかしてくれるとは思っていたがまさかこんな芸当が出来るなど聞いていない。
よく考えればこんな非現実的なことを話されたって普通信じないだろう。
「だからか……」
だからイルミはあえて言わなかったのかもしれない。
あの力は危険だと長年の感がそう言っている。
イルミはシャボンディ諸島で会ったという弟のキルアの話しをするときはどこか嬉しそうな感じで話していたが、もう一人の今有り得ない現象を起こした子供の話になると嫌悪の混じった眼で心底忌々しそうに話していた。
それはもう此方がゾッするような眼で。
まるで大事にしていた玩具を取られた子供のよで、
「…ー確かにここでどうなろうとお前にはどうでもいいことだろうからな…!!」
自分の世界に実害はなければここ(異世界)がどうなろうとイルミにとってはどうでもいいと思っているだろうことは想像に容易い。
きっとイルミにとって少女、アルカは邪魔な存在だったのだろう。
そして海軍がこんな力を、特に上層部が見逃す筈がないと知ってーーー、
ようは押し付けられたと言ったら聞こえは悪いがそういうことだろう。
利用しようにも何が起きるか分かったもんじゃないし、なにより下手に手を出してとんでもないことが起きてからでは遅い。
弟のキルアを置いていったのはキルアが生き残ることに絶対の自信でも有るからだろうか。
「面倒なのを置いていってくれたな、イルミ」
そう吐き捨てるとセンゴクは今は居ない男の消えていった方を睨みつけながら忌々しげに再度キルアとアルカをみる。
どの道アルカは兎も角、弟のキルアは後の為にも絶対に何が何でも今ここで始末しなければならない。
「二度も立ちはだかるか、念能力者共…ー今度こそお前等の好きにはさせん……!!」