狩人×OP

□10.嵐の前の静けさと兄の伝言
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コンコンッ




『開いてるよ』







キイィー…と音を立ててドアが開く。
ドアに目をやると意外な人物がそこに立っていた。



「珍しいねぇ…君がこの部屋に訪ねて来るなんて」

「思ったより早く準備が終わってね。アンタとゆっくり話が出来なかったな、と思ってね」

「それこそ意外だねぇ」





本音を言うと暇潰しなのだろう。






「何か飲むかい」

「珈琲貰おうかな」


珈琲を淹れに向かうのを一度横目に、あたかも自分の部屋かのようにソファーに座る。








二人分の珈琲を持ってやってきた黄猿はそんなイルミの様子にまるでお嬢様だな…と思ったのはここだけの話だ。

手際良くイルミの前に珈琲を置いていく。

普段の自分なら確実にしないだろう事をして席についた。

これを青雉や赤犬等辺が見たらギョッとした顔をして頭でも打ったかとかなんとか散々言われまくる事は間違い無いだろう。

それ程までにこの光景は異様で、しかもイルミ本人はまるで当たり前かのようにそれを受け取って優雅に飲んでいる。

イルミがカップを置くと同時に黄猿の方から話を切り出す。





「で、話ってのは?まさか暇潰しだけの為に来たわけじゃぁないんでしょ。もしかして明日の事かぃ?」

「半分正解で半分は不正解」



再度珈琲の入ったカップを口に運び一口だけ飲み、カップを置く。


「まぁ、アンタの言う暇潰しっていうのはあながち間違ってはないけどあそこじゃ盗み聞きが趣味の人達が居るからね」

「あの時の事根に持ってんのかぃ」




何日か前の話を切り出され苦笑する。


「あー…うんまぁその事は大して気にしてないから。それよりアンタに頼みが有るんだけど良いかな」




疑問系なのに命令形に聞こえるのは自分だけだろうか。

どうやら反論は聞きつけないらしいイルミの物言いに諦めて二つ返事で返し、話の続きを待つ。


「しかし、君から頼み事何てどんな風の吹き回しだい?自分で直接言った方が早いだろうに」

「んー、アンタならちゃんと伝えてくれるんじゃないかと思って。ほら、俺明日昼前には帰るからさ」

「それなら青雉とかの方が正確に伝えてくれると思うけどねぇ」

「だってキルと会ったのアンタだけだし、別に何となくだよ。大したことじゃないから伝えなくてもも良いし」


なら言わなくても良いのでは?と思ったがイルミ相手だと言うのも横暴になってきる。












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今日は遂に海賊王の息子、兼白ひげ海賊団2番隊隊長ポートガス・D・エースの公開処刑の日だ。

今回の公開処刑はどちらが勝ったとしてもかなりの痛手をおうのは免れない。





それよりもと言ってはいけないが黄猿はあの時のイルミの言葉に何とも言い難い怖ろしさを感じた。




「アイツも中々怖ろしい奴だねぇ……」


あれはもう弟に対しての忠告というよりは、一種の執着心からくるもののように思える。

何故彼はあそこまでに弟のキルアに執着するのだろうか、自分には分かり得ない事なのは確かだ。

黄猿は昨日の夜の出来事を今日の準備をしながら思い出していた。
















『で、頼みって?』

『あぁ、それはね………』


イルミは一拍おくと、それは酒場のママさんに話すかのような何ともない感じで言ってのけた。


『俺も仕事が有るからね、今回は見逃すけど次は逃がさないよ。必ず家に連れて帰るからって。あ、後アルカはもう殺すつもりはないから安心してって伝えといて』




あまりにも自然にかつ当たり前のように言ったので危うく普通に聞き流す所だった。




自分は伝言板じゃないんだがねぇ…と愚痴りつつもしっかり伝えに行くことは忘れない。

だが海軍の大将をパシりに使うなんてイルミくらいだ。
普通なら恐れ多くて出来ないというもの。

まぁ、彼は普通では無いので当てはまらないだろうが。




「まぁ精々頑張りなよ弟君」



ここには居ないイルミの弟に心の籠もっていない声援を送ると、支度を終えて昼からイルミが帰ることを伝える為にセンゴクの所に向かう。




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