狩人×OP
□13.もう嫌なんだ
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マルコは未だにキルアが言った事を信じられずにいた。
「船医すら匙を投げ出す程の傷を本当に治せるのかよい……」
「愚問だね。やると決めたからにはやり遂げないとね、寧ろこれはまだ良い方だ」
といっても治すのは俺じゃなくてアルカだけど、と補足する。
これが良い方ってこれより悪いってどんだけ酷い傷だよ……と言いたい所だが今はそんな余裕は無いので心に留めて置くことで口に出すのを止める。
しかし、船医すら匙を投げ出たのに只の子供に治すことなど出来るのだろうか。
まぁ、この状況下でデマではないのは確かだと思う。
この少年は嘘はつかない、と何の根拠もないのにそう思わせる程の何かがこの少年、キルアには在った。
そこでふとキルアが考えた作戦を思い出す。
彼は目的地は崖の向こうだといった。
しかし何で崖の向こう何だ?と疑問に思う。
エースを治すならこの場でも出来る筈。
「ここじゃ無理なのか?」
思った事をそのままキルアに疑問をぶつけると、何とも曖昧な返事で返された。
「無理って訳じゃないけど向こう側に行った方が俺達的には助かるってのも有るんだけど、少なからずアンタ達にも特は有っても損はしないよ」
そう言い前でルフィを護衛しながらも攻撃を繰り出している白ひげ海賊団に目をやるが直ぐに逸らしてマルコに視線を戻す。
「当たり前だけど海軍は全力で阻止しようとしてくるだろ?」
「だろうな」
「それに向こうには大将とかもいるからね。もし向こうについてもほぼ狙われる可能性が高い」
それで?と続きを施しながらもマルコは不思議な感じだった。
彼の兄を見ているからだろうか。
彼、キルアは兄とはどうしても似ても似つかわないのでキルアは親父似というのは本当なんだろう。
何故なら兄の方はここまで表情豊かではなかったし、何より彼は考えや話し方は大人のような話し方だが。
キルアは誰でも覚えやすい簡単な作戦を言うが成功させるのは一苦労なものだった。
それもそうだ向こうだって海兵としてのプライドがあるんだからここでエースを助けられては大変なことになるから全力で阻止しにかかるのは当たり前で、そうなれば三大将はおろか、センゴクも動くことは明らかだ。
「作戦って程でもないけど、要は援護って事」
「簡単に行ってくれるねぃ」
「仕方無いだろ?俺の実力じゃあの明らかに職を間違えました的な顔をした人達には適わないんだから」
「……それ本人達の前では言ってやるなよい」
「言わないよ!まだ死にたくないし」
「素直なのは良いことだよぃ」
「意味無い嘘もつくけどね」
試すような目を向けてマルコを見るキルアに肩を竦めると真剣な顔つきになる。
キルアも先程のおふざけはどこへ行ったのやら、真剣な声音で答える。
「それより一刻も早く向こうに行かないとこの人手遅れになる。そうなったら元も子もないからね」
「…そうだな。俺はどうすれば良い?」
「俺は一気に向こう側まで行けるから問題ないけど、アンタは?」
そう訪ねるキルアに誰に向かって言ってんだい、とニヤリと笑う。
それもそうだ、と頷く。
「合図は俺が10秒カウントをする」
0と同時にアンタ達のオヤジの白ひげの所に俺とアンタで別々の方向から一斉に向かう。
俺は左から行くからアンタは右から目的の場所まで行ってくれ。
簡単かつ、シンプルな作戦を伝える。
「確かシンプルで分かりやすいねぃ……だが何でオヤジの所何だよい」
集合場所が自分達のオヤジの所という点に疑問に思う。
感情の読み取れない笑みを見せるキルアにこの年頃の子供がするような笑みではないな、と頭の隅で考える。
「ん゙ー…まぁ後のお楽しみと言うことで、じゃ駄目かな?アンタ達にとって悪いことじゃないことは確かだよ」
「ははっ!そういうことにしといてやるよい」
そこで話を切ると、行くよ?と言うとカウントを始める。
10、9、8、7 ……とカウントを始める。
周りでは刀同士がぶつかり合う音や、銃声の音などの様々な、音がひしめき合う中変声期を迎えていない少し高めのキルアの声は良く通り、かき消される事なくマルコの耳に届く。
5秒を切った所でマルコは能力を発動させ、体中を青い炎で包む。
0と呟くと同時にキルアは左側から向かい、マルコは右側から目的地に向かう。
警戒してはいたが二手に別れて移動したマルコとキルアに面倒だなと思いつつも相手の策が分からない以上下手に動いて失敗でもしたら元も子もない。
だからと言って何もしないわけには行かない。
白ひげ海賊団も勿論だが、特に白ひげ海賊団一番隊隊長、不死鳥のマルコとイルミの弟、キルアを警戒するよう指示を出す。
「一体何をする気だ……!!」
センゴクはさっきから嫌な予感がしてならない。
こういう時の嫌な予感は大抵当たると長年の感がそういっていた。
しかもキルアは只の子供ではない。
油断は禁物だ。
「アイツと言い、とことん人の邪魔をするのが好きだな」
そう吐き捨てると新たな参加者に頭を抱えそうになるも、何とか抑え眉をしかめるだけに留める。