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□紅い花
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「相談したいことがある。八人将を呼べ」
八人将はその王の一言で集い、頭を垂れる。
「顔をあげろ」
そうして目に入るのは、珍しく険しい目をした王の顔。
「如何なさいましたか、王よ」
ジャーファルのアルトが緊張した部屋の空気に響いた。
「………この間の衆議で上がった事だが」
「新しい交易国の件でしょうか」
「ああ。実に優れた文化の国で工芸品に溢れ、あらゆる資源にも恵まれている。国王も友好的で非常に期待していた相手国だったのだが………」
「はい、友好条約締結の準備も滞りなく進めている国ですが……何か?」
「………噂に過ぎないのだがな」
その国は麻薬取引で発展した国で、このシンドリアにも非合法麻薬を密輸しようとしているらしい。
「…………!!」
それは八人将を震撼させるのに十分な噂だった。麻薬の流通によって国家が破綻しかけた例は数多く上がっている。
「それだけは何としてでも阻止せねばならん。が、あくまでも噂で確証がない。向こうにその気がなければ、こちらがこの交易を蹴る理由は何もない。
そこで、密偵を出そうと思う」
「密偵、ですか」
「ああ。来週末、国王が条約締結のためにシンドリアに来る。そ
こを狙う」
「しかし、どのような形で………?」
「その国はいわゆる絶対王政の国で、決定権は全て国王にある。国王に取り入るしかないだろう」
「取り入る?!危険です」
「だからこそお前らを呼んだんだ」
シンドバッドは更に険しい顔をする。
「ただの密偵では死のリスクが高すぎる」
麻薬で勝ち上がっていった国。その国王への密偵。今回の密偵は直接接触を要する。大国の大きな影を知ったと悟られたが最後、口封じに殺されることは必須。
「密偵としての最低限の条件、身体能力が高いこと、記憶力に優れていること、己の姿を偽れること」
「この時点でマスルールとシャルはだめだね〜」
ピスティがけらけら笑いながら言う。異論無し。
「更に、いざというときのために戦闘能力が高いこと、八人将であることを隠せること………ドラコーンとヒナホホはダメだな」
「おいおい、つまんねーな」
「どの道次の条件で二人はカットだ。………女装できること」
「は?」
「国王は大の女好きらしい、よって女として潜入してもらう」
「………」