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□Summer time
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クリーム色のカーテンにうすピンクのベッドシーツ。枕元にはぬいぐるみ、机にはクラス写真が可愛い写真立に飾られていて、時計はりんごの形。
「……………何度来てもお前の隠れ女子っぷりには驚愕するな」
「失礼ですね、私元から女ですよ」
「いや、性別的な話じゃなくてさ」
「はぁ?まあ良いです、とりあえずベッド座っててください。救急箱取ってきますから」
「ああ」
「あ、あとベッドに足まで上げないでくださいよ、あんた足臭いんですから」
「………おー」
カチャリ、と閉められたドアの向こうから、とんとんとん、と軽やかに階段を降りていく足音が聞こえた。
「はぁ……………」
ドサッ、とベッドに腰かけたところから体を投げ出す。
幼なじみのジャーファルと付き合って、もう半年になる。なのに何もない。
否、何もない、と言うわけではないが。遊びに行くときは手を繋ぐようになったし、通学鞄につけているストラップだってお揃いを買った。
ちょっとしたスキンシップでも面白いくらいに頬を赤くするし、他の女と親しそうに話すと多少なりとも不機嫌になるようになった。
幸せさ。そりゃもう幸せさ。伊達に幼馴染みをやってたわけじゃない、そんじょそこら
の高校生カップルなんかとは訳が違う。
けど。
…………………Aだろ。
恋愛のABCで言ったら未だにAだろ!!
良い高校生が!!
半年かけて!!
A!!!!
言っとくがまだキスもしてないからな、これは相当由々しき事態だと思う。
どうしたものか。
これまでそれらしいアプローチをかけてみたがいずれも失敗している。カーブで分からないのならば、と直球でキスしたいと一度言ったが死んだ魚の目をされた。
「何でかなぁ」
幼馴染みでも彼氏なんだ。彼氏にキスして良いかと聞かれてそんな目をする女がどこにいる。
俺の予定では少なくともその後えっちめなキスにこぎ着けるはずだったんだぞ!!
はぁ……と思わず深くため息をつく。
「…………かっわいくねぇの」
「それはすみませんでしたね」
「ぅおっ?!」
慌てて体を起こすと、部屋の入り口にむすっとした顔のジャーファルが立っていた。
「いつから………」
「今ですけど」
「あのな、かわいくないって断じてお前の事ではなくてな」
「下手な嘘はやめてください。何となく分かるんですから」
そう言いながら、俺の前に座って救急箱を開ける。
「………自覚だってしてるんですよ。か
わいくないって」
「は?」
「だって、そうでしょう?」
消毒液で湿らせた脱脂綿をピンセットでつまみ、膝を叩く。少ししみた。
「………あなたに、色々と我慢させてるのは気付いてるんです」
「……………」
「でもその……恥ずかしいというか、幼馴染みでずっと一緒にいたのに、何か私ばっかり変に意識しているようで悔しいというか」
「……………………」