Du bist mein Licht

□Eins
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月夜と共に部屋に広がる花と、錆びた鉄の匂い。

「(……ああ、来ましたね)」

彼女が来るのは、一体いつぶりだろうか。彼女は猫のように気まぐれに訪れては、彼…メフィスト・フェレスの部屋に花と鉄の匂いを残して気まぐれに去っていく。
まあ今回は、自分が呼んだのだが、とメフィストは顔に浮かべた笑みを深くした。

やがて扉が蹴破るように開けられて、恐らく悪魔の返り血であろう黒ずんだ赤い斑点をつけた少女が無遠慮に部屋に入ってくる。
メフィストはその少女を見つめると、にっこりと愉しそうに口を歪ませた。

「お久しぶりです、零さん。ですが少々入り方がはしたないですよ。淑女たるもの、もう少し、」
「…うるさい。お前から呼んでおいて随分な言い草だな」

零は小綺麗に整った顔を忌々しそうに歪めて呟くと、煩わしそうに肩に掛かった髪を払って、ソファーに座り足を組む。

「おや、相変わらず手厳しい。今回の任務は如何でした?…まぁ、言われずとも分かりますがね」
「なら聞くな。私は忙しい、さっさと用件を…」
「はいストップ☆」
「…!?」

言え、と続けようとした零を、メフィストは制止する。
メフィストは愉しそうに喉を鳴らすと、零を指差して眼を細めた。

「淑女なのですから、しっかりと血を落としてから……そうですね、ティータイムでもしながらゆっくりとお話ししましょうか☆」

ぱちん、と指を鳴らすと、ぽんっと軽快な音を立てて、零が今着ているものと同じ祓魔師のコートが現れる。零はそれを無造作に受けとると、チッ、と舌打ちをして立ち上がり、踵を返す。

「…シャワー借りるぞ。…覗いたら殺す」
「零さん」
「…なんだ、まだ何か、っ……!?」

メフィストはぐいっと零の肩を引っ張ると、その反動で振り向いた零の口に自分のそれを重ねた。
零は突然のことに驚いたのか、いつものポーカーフェイスが崩れ、目を見開いていた。

「……おかえりなさい、零さん☆」

メフィストは口を離して、ニコリと零に微笑む。

零は暫く黙ってじっとりとメフィストを睨んでいたが、はぁ、と一つの溜息をつくと、呆れたように口を開いた。

「……ただいま、メフィスト」




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