Du bist mein Licht

□Zwei
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「さ、行きますよ零さん」

入学式の後。
メフィストは零を連れて、待たせていた燐の迎えに来ていた。

「何故わざわざ私まで…」

そうぼやきつつも、零はしっかりと正十字学園の制服へと着替えていた。

「おや、彼はもう来ているようですね」

メフィストは街灯に座り、燐に声をかける。

「お待たせいたしました」

何故街灯に登るんだ、というツッコミは心に留めておくことにして、魔神の息子だという少年をまじまじと見つめる。

「(…こいつが)」

あの、魔神の息子か。

「祓魔師にはどうやってなるんだよ」

そうメフィストに問う燐を眺めて、
魔神の息子が祓魔師とは随分と滑稽なものだ──まあ自分も似たようなものなのだが──、と思考を巡らせつつ、メフィストの塾についての説明と燐に対する警告を、ぼんやりと聞き流す。

「ところで、そいつは?」

一通り話が終わり、燐の興味が零へと移り。零はぼんやりとしていた意識を浮上させ、燐へと向けた。

「茜崎零さん。貴方と同じく、今日から塾に通う生徒ですよ」
「つまり…その、一般人?エッ俺が悪魔ってバレて大丈夫なの!?」
「大丈夫ですよ。彼女は色々と特別なのです」
「特別…まぁいいか!よろしくな、零!」

向けられる屈託のない笑顔をちらりと一瞥して、にこりともせずに呟く。

「…よろしく」

そんな零に燐は気にした様子もなく笑いかける。

「…しかしね。やや心配なので、今回は私も見学させていただきますかね」

二人の話が終わったタイミングを見計らい、メフィストはそう言って指を鳴らす。
ぽんっ、という軽快な音を立てて、目の前のピエロのような男は瞬く間に、白く愛らしい犬へと変化した。

「エッ 祓魔師って変身とかできんのか!?」
「できません。私は特別です」

そう素頓狂な声をあげる燐をよそに、零は至極興味がなさそうにメフィストの隣を歩く。

「そうだ。"塾の鍵"を差し上げましょう」
「鍵…」
「いつでもどこの扉からでも塾へ行ける便利な鍵ですよ。ためしに適当なドアをその鍵で開けてごらんなさい」

メフィストは燐をそう促すと、燐は不思議そうな顔をしながら鍵穴に鍵を差す。
燐はドアノブを捻ると、恐る恐る中へと入っていく。零はそれを追うように中へと続いた。

ドアをくぐると、先程まで景色とは打って変わって、絢爛な洋装が顔を覗かせて。

「!!スゲッ」
「一年生の授業は一一〇六教室です」

零はキョロキョロと落ち着かなそうに辺りを見回す燐の後ろにつくように合わせて歩く。

しばらく歩くと、一一〇六、と書かれた扉が見えてくる。
燐はそわそわと落ち着かなそうにその扉を押すと、扉がギイイ、と鈍い音を立てて開いた。

「(零さん。くれぐれも、正体を明かさないように)」

いつの間にか零の横へと来ていたメフィストが、零にだけ聞こえるような声で囁く。
零は分かってる、と小さく呟いて頷いてメフィストを睨むと、燐の後をついて教室へと、足を踏み入れた。




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