Du bist mein Licht
□Zehn
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「…………」
やはりこの堅苦しく騒がしい雰囲気は好きではない。零はそう思い顔を歪ませた。
ここはいつも、好奇と興味と、それから猜疑心と──時折侮蔑に満ちた目を向けられる。
それは、人の感情の機微に敏感な零にとっては、至極煩わしく───気持ちの悪いものだ。
「おや☆随分とご機嫌斜めなようですねぇ☆」
そう、胡散臭い笑みを浮かべてくるこのピエロのような男に、零は心底呆れたように溜息を吐いて。
「……お前は随分と楽しそうだな」
まあ実際楽しいのだろう。全く理解は出来ないが、と零はそう思い口をつぐんだ。
余計なこと言って、上の機嫌を損ねては面倒だ。
「そこに跪け」
ブチッ、と無情な腱を切る音も、それに上げられる断末魔のような声さえも、零にはどうだっていいことで。
──ああ、始まる。
「静粛に!被告人は陳述台へ」
「被告人?…って私か!」
どこかわくわくとした浮わついた表情のメフィストに、はぁ、と零は何度目かも分からない溜息を吐き。
コイツは自分の置かれた状態を分かっているのだろうか、と頭が痛くなってくる。
「これより被告人メフィスト・フェレス正十字騎士團日本支部長の、懲戒尋問を開廷する!!」
最も──そんなことを考えることさえ、無駄なのかもしれないが。
この、「時の悪魔」の前では。
「…………はあ」
あのメフィストのことである。
恐らく、今後の行く末も───この懲戒尋問がどうなるかさえ、分かっているのだろう。
ならば、零の取る道はただ一つだけで。
「私は──ただ、ついていくだけだ」
もう、覚えてさえいない、幼い頃。
もう、数えることもやめた、何年も前。
メフィストに出会いその手を取ったその瞬間から──…そう、決めたのだから。
例え、己の行く道に救いは無くとも。
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