Du bist mein Licht

□Elf
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零には、メフィストの考えなど理解出来ないのだ。

あの青い夜、零はその場に居合わせなかった。あの夜に何があったのか。あの夜に二人は何を見たのか。
ずっと零は、それだけが気に掛かっていた。何故魔神の息子を生かし、育てたのか。本当の目的はなんなのか。それを今ここで知ることが出来ると言うなら、この堅苦しく重い雰囲気も悪くは無いとさえ思えてくるのだから不思議だ。

「では、率直に尋ねる。その悪魔は魔神の仔かね?」

随分と今更のような気さえしてくる質問だと、零は内心で溜息を吐いた。あの青い炎は紛れもなく魔神のものであり、もう、大体の者には想像がついている筈なのだ。
しかし奥村 燐が魔神の息子であることは、思えば一部の人間にしか知られていなかったことなのだから、当然と言えば当然の質問ではあるのだが。

「左様でございます。今更申し開きもありません」

そう、高らかにメフィストが言えば、ザワリと辺りが微かに喧騒を帯びる。
ここにいるもの達の殆どが、信じたく無かったのだろう。魔神の息子は生きていて、かつ祓魔師となる為に勉学に励んでいる、などと。

勿論、零とて例外では無かった。如何な理由とは言え、憎き魔神の息子を許容するなど。零にとっては、虫酸が走るほどの事象であるのだ。

悪魔を祓う。故に悪魔の、それも魔神の息子の血を持つ燐は、祓魔師にとって異質な存在であり、排除すべきであるのだと。別に零にとってそんなことはどうだっていいのだ。…ただ、自分が嫌う者の半身とも言える燐がどうしても気に入らないだけの話であり。
魔神の息子だからどうのなど、零には関係がない。ただ、気に入らない。それだけの話だ。

───けれど。

「…サタンと戦う武器とする為に」

メフィストが決めたことであるのなら、零にとって話は別になる。

「…ここにお集まりの皆々様!!私と賭けをなさいませんか!?」
「…………」

零の全ては、「メフィスト」だ。

彼女にとっての全ては彼であり、彼女にとっての主は彼である。
ならば零はそれに従うだけなのだ。

「このサタンの仔が虚無界の大魔王となるか!!はたまた騎士團の……いや!」

───それが、零の決めた道。

「物質界の救世主となるのか賭けるのです!!!!」

奥村 燐を武器とし彼は何を得るのか。
彼にとって自分の父である魔神を倒すことは何を意味するのか。
物質界も、燐も、零をも巻き込んで、何を為そうというのか。
導となる王の真意が、何を指すものなのか分からずとも。

「──…私はお前に従うさ」

ただ、従うだけなのだ。
時の悪魔に堕ちた、紅の少女は。

なあ、メフィスト。
だってお前は、あの時───



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