Du bist mein Licht

□Vier
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夜の閑散とした空気を切り裂くように響く、銃声。
深い宵闇に、祓魔師の証である階級証が鋭く輝く。

その階級証の持ち主である少女は、祓魔師の中でも少々特異であった。

まず、鋭く光る紅蓮の眼。それは決して人間に現れない色である。
次に、悪魔に対して異常と言える程の執着を持っていること。
祓魔師でありながら、最も悪魔と関わりを持つこと。

そして最後に。彼女は、「人間ではない」ということ。

それ故に彼女は、騎士団の中でもそれなりに強い権威を持つ上級祓魔師でありながら、一部の人間には、恐れられ、忌み嫌われていた。

確かに彼女は少々変わっている、と言えるだろう。
性格はさることながら、彼女には謎が多かった。

まず、出自が不明である。祓魔師になる前にどこで何をしていたのか、正確な歳はおろか、名が本名であるかすら分からないのだ。

彼女は多くを語らない。

自分はただ、全うするだけなのだ。
自分の役目を。

「…はぁ」

少女は周辺にいた悪魔を全て一蹴すると、腰につけていたホルターへと銃を収めた。

彼女は夜が好きだ。夜は静かで、彼女の日頃の苛立ちを忘れさせてくれる。
闇に身体を浸す度に、えも言えぬ安心感が、彼女を包むのだ。

彼女は悪魔を狩るのが好きだ。悪魔を狩ることは、彼女に存在意義を与え、生きる活力を与えてくれる。悪魔を狩っている間は、嫌なことも全て忘れ無になれる。

だから彼女は、祓魔師となった。

「───……」

彼女は笑わない。笑顔などとうの昔に捨てたのだ。
彼女は泣かない。泣くということを忘れたからだ。

彼女は、感情の一部が欠落していた。

けれど彼女は考える。
生きる意味を。存在する価値を。

けれど答えは出ない。
堂々巡りだ。

けれど彼女は思う。
生きる意味がなくとも、存在する価値が見出だせなくても、生きようと。

「彼」がそれを望み、それを自分に与えてくれたのなら、それを全うするのだと。

「彼」は彼女の一番なのだから。

けれどそこには何もない。
何も見出だせない。

分からない。分からないのだ、彼が。

考えても考えても答えは出ない。

それでいい筈だったのだ。
彼が分からずとも、そこに彼の気持ちがなくとも。

だって自分は、彼にただ従うだけなのだから。

なのに今は、嫌なのだ。
何故かは分からない。何が嫌なのかは分からない。

考えれば考えるほど、何かが頭を支配する。

彼女はそれを掻き消そうと、宵闇の中を再度走り出した。










───私は、なんなのだろう。



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