Du bist mein Licht

□neun
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「シュラ」

背後から、声がする。
零が見たものは、背後から首元へと刃を突きつけられているシュラで──
成程これが現聖騎士の実力かと、零はその形のいい眉を歪めた。

「…っ、!…メフィスト、無事か?」

そうメフィストだけに聞こえる声で問えば、問われた本人は至極愉しげに口を歪ませていて。その光景に、条件反射とはいえ、こんな奴を何故私は守ってしまったのだろうと零は数秒前の己へと問いを投げた。

「…何を笑ってる」
「おや、零さん。これが笑わずに居られますか?…これからますます、面白いことになりますよ」
「はぁ?」

そうメフィストが呟けば、響く風切り音。
アーサーの剣がメフィストと燐を差すようにこちらへと向けられて。

「三賢者からの命令だ。今より日本支部支部長メフィスト・フェレスの懲戒尋問を行うと決まった。当然そこのサタンの仔も証拠物件として連れていく」
「は…!?」
「…ほう!それは楽しみです☆」

懲戒尋問だなどと。これの何が、一体面白いというのか。
何より零はあの堅苦しい雰囲気は好きではないし、メフィストは己の立場が危うくなっていることに気が付いているのか。
零にとってはそれが、胸に突っかかる出来事で。

時折この目の前の──ピエロのような男は、救いようが無い程に馬鹿なのではないか、と不安になる。

───しかしメフィストのことだ。何か考えが、あるのだろう。

「シュラ。…それと、零も、だな。お前らも参考人として加わってもらうぞ」
「は…!?何故私が…」
「ブルギニョン!候補生を連れて行け!」

どうやら己に拒否権は無いらしい。零はまたこんな面倒事を、と当事者であるメフィストと燐を恨めしげに睨む。

ああ、頭が痛い。

「みんな無事か!?」

何やら魔神の息子が叫んでいる。
──己の状況下を鑑みず他人の心配をするだなどと…成程、コイツはかなりの馬鹿であるのだな、とズキズキと痛む頭の隅でそう、思う。

嗚呼…──滑稽、だ。

「な"んで…サタンの子供がッ…祓魔塾に在るんや!!!!」

浴びせられる、拒絶の言葉。
当たり前だろう。何故、分からないのか。
魔神は物質界の敵だ。そして15年前の──あの青い夜を発生させた、災厄だ。
それの、息子だ、などと。拒絶されるに決まっている、のに。

反吐が出そうな程に──真っ直ぐだ。

「(虫酸が走る)」

己とは、正反対すぎて。
「似た者同士」の境遇下にあるというのに──何故己と奥村 燐はこんなにも──異なる、のだろう。

恐らく、一生零とは相容れぬのだろう。

「(魔神の息子などと──同じになどされたくない)」

己は、己なのだから。







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