龍は刹那と永久を抱く

□龍は刹那と永久を抱く
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その昔、全ての魔物を統べる龍がいた。

その龍は古代龍の王。

美しい姿に強い力。
そして誇り高き意志。

魔物だけではなく人々もその龍を崇めた。

しかしある日、古代龍の王は忽然と姿を消した。
魔物たちは統率をなくして荒れ、人々は魔物に苦しみ嘆き悲しんだ。

その出来事からずいぶんと時がたち、人々が自らの知恵と力で栄えはじめ、当時の出来事が言い伝えのように語り継がれるころ、それは起こった。

運命の輪が、回りはじめる──

◇◇◇

鬱蒼とした森を明るく照らしていた日が沈みはじめ、青々とした緑が朱に染められていく。
その朱に染められた若葉のなかにある開けた崖に、光輝く金髪の少年がポツンと立っていた。

その少年の名前はリューイ・アストラス。

リューイの足元には、石が置かれただけの質素な墓が。
その墓の下に眠るのは、唯一の支えだった母だ。

リューイはそっとしゃがんで、持ってきた花を母の墓へと手向ける。

「母さん、今日も来たよ。俺、元気だから……ね? 心配しないで?」

リューイは寂しさをこらえて、母の墓に笑顔をむけた。
亡き母に、心配させまいとしているのだろう。

「今日は来るのが遅くなったからすぐ帰るけど……今度はもっと早く来るから、いろいろ話そうね」

そう言うとリューイは立ちあがって、なごり惜しそうに墓を見つめる。

「じゃあ、またね……」

リューイはそう言って、自分以外に人がいない寂しい家へと足を進めた。






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