江路学園へようこそ!
□ファンクラブパニック!
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「んー…やっと終わったぁ〜」
長い説明を聞き終えた俺は、固まった身体をほぐしつつ教室に向かって歩きはじめる
「あ〜、しばらくは大変そうだなぁ〜」
俺は会長から最後に言われたコトを思い出して複雑な気持ちでため息を吐いた
実は今、生徒会は行事の準備真っ最中で、特に忙しくなる会長に代わって行事が終わるまでは副会長が俺に仕事を教えるコトになったらしい
タイプの腹黒副会長と一緒ってのは嬉しいけど…
なんか色々やらされそうで怖いんだよねぇ〜
「うぅ、ちょっと憂鬱…」
って、いつまでもウジウジしてたら鬱陶しいよねぇι
今日は天気がよくて暖かいから気持ちいいし、気分転換にこのままひなたぼっこに予定変更しようかなぁ…
なぁんて考えてたら──
「あっ! 揚羽君、ちょうどいい所に!」
「ん? あ、弥尋先輩!」
授業が終わったばかりでざわつく廊下を横切って、弥尋先輩が俺の方へパタパタと走ってきた
どうしたんだろ?
「今から揚羽君の所に行こうと思ってたんだ。実は、お願いしたい事があって…」
「お願いしたいこと? なんですか?」
可愛い先輩のお願いなら喜んで聞きますよぉ〜♪
「あの嫌だったらいいんだけど…」
「はい」
なんだろ? ずいぶん言うの渋ってるな
「その…今日も親衛隊の子達と、ご飯食べてくれない…かな?」
「え?」
なにを渋ってるのかと思ったら、そんなコト? ソレ渋る必要なんかないよ!
可愛い子たちとご飯なんて、むしろコッチからお願いしたいくらいなんだから!
「あ…嫌ならきっぱり断って? 迷惑かけたい訳じゃないから…」
「そんな、イヤとかないですよ! 迷惑とかもナイです!」
弥尋先輩の健気な言葉にキュンときて思わず叫ぶ
「揚羽君…」
あ、なんか弥尋先輩がキラキラした目で見てきてる
やっぱり可愛い。可愛くて、ついつい弥尋先輩の手を握っちゃった
お、握り返してくれた。もうときめきが止まらないよっ!
「ぜひ、ご一緒させてください」
「…はい♥」
じゃあ行きましょうって促した後に、響介に連絡を入れてないコトに気づいた
弥尋先輩に断ってから、手早く響介にメールを送る
連絡しておかないと、ひなたちゃんと丞を待たせちゃうからね!
「コレでよしっと…ありがとうございます、弥尋先輩。お待たせしました」
「ううん、大丈夫だよ。それじゃあ、行こっか」
「はい!」
弥尋先輩の言葉に元気よく返事をしたあと、握ってた手を繋ぎ直して食堂まで歩きはじめる
「っ、揚羽君!」
あ、弥尋先輩赤くなってる。可愛いなぁ
思わず顔が綻ぶ
もうこの手は離さないよ!
なぁんて思ってたけど…食堂に着いたら弥尋先輩に手を離されちゃった
他の隊員に示しがつかないからって言われたら大人しくしてるしかないよねι
弥尋先輩の後を大人しくついてく
そんで着いた場所は、前と同じ食堂の奥
って、あれ?
「みんなお待たせ。揚羽君、来てくれたよ!」
「こんにちはぁ〜」
──ざわっ──
「ん?」
『こ、こんにちはっ!』
「ははっ、こんにちは♪ みんな元気ですねぇ〜」
前より勢いがね、すごい
元気だからってだけじゃないと思う。たぶん…
「弥尋先輩」
「ん? どうしたの?」
「親衛隊の人、ちょっと増えてません?」
「あ、うん。それもあったから呼びに行ったんだ」
「そうだったんですか」
ん? それも?
「続きは注文してからにしよ? はい、座って揚羽君」
「あ、はい。ありがとうございます」
それもってコトは他にもあるのかな?…なぁんて考えてたら、弥尋先輩が俺のためにイスを引いてくれた
弥尋先輩、優しいなぁ
さりげない優しさにキュンときて、おもわず抱きしめたくなっちゃった
けど、今はガマン
この状況でしちゃったらきっと迷惑かけちゃうからねι
頭から煩悩を振り払ってさっさと注文をすませる
それからみんなが注文し終わるのを待って、弥尋先輩が口を開いた
「揚羽君、今日は突然誘ったのに来てくれてありがとう」
『ありがとうございます!』
「いやいや…こっちこそ、また可愛い子たちと一緒にご飯食べれて嬉しいです」
そう言って、思わず甘ったるい微笑みを浮かべるトコだったけどなんとか抑える
前に弥尋先輩にお願いされたの思い出したんだよね
笑いすぎると倒れちゃう子がいるからって
気をつけたおかげか、今回は倒れちゃう子は出なかったみたい。よしよし
「そう言ってもらえてよかったよ、ちょっと気になってたんだ。でも朝の事を詳しく知りたかったし、新しく入った隊員の紹介もしたかったから…」
「あ…」
朝のコトすっかり忘れてたι
きっとすごい心配させちゃったよね
弥尋先輩が慌てて教室に飛び込んでくるくらいだもん
ちゃんと説明して謝らなきゃ
「朝のコト、みんなに心配させちゃいましたよね…? すみませんでした」
そう言って頭をペコリと下げる
そしたらみんなが慌てて止めてきた
「ちょっ、揚羽君!」
「そんなっ、頭を上げて下さい!」
「揚羽君は頭なんて下げなくていいよぉ〜っ!」
「いや、そんなワケにはいかないです」
こういうコトはしっかりしないと
「心配させちゃったんだから謝らせて下さい。みんなのコト大切だって思ってるから…こういうコトはあやふやにしたくないんです」
そういう気持ちを込めて、みんなを見つめる
そしたら弥尋先輩が小さく笑ってうなづいた
「わかったよ、揚羽君」
「弥尋先輩…」
「でも、みんなの気持ちもわかるんだ。好きだから心配しただけで、謝って欲しいんじゃない。だから…謝るんじゃなくて、ありがとうって、言ってくれないかな?」
弥尋先輩は俺の目を見つめ返してそう言った
謝るんじゃなくてありがとうって言う、か…
そっか、そうだよね
ごめんなさいって謝られるより、ありがとうって言われたほうが嬉しいよね
「わかりました、弥尋先輩。…みんな、俺のコト心配してくれてありがとうございます」
さっきと同じように頭を下げたけど、今度は誰も止めたりしなかった
「いえいえ〜」
「心配するのも親衛隊の活動の内だから!」
「気にしないで?」
みんな、優しい言葉をかけてくれる
それが嬉しくてつい笑っちゃったら──
「…はぅっ」
「揚羽君の微笑み…っ」
「がっ、眼福ですぅ…」
何人か倒れちゃったみたい
「あー…すみません、弥尋先輩ι」
「いや、今のは仕方ないよι 衛生班、お願いします!」
『はいっ!』
衛生班の人が元気よく返事をして、倒れた子を運んでく
また迷惑かけちゃったから謝ってお礼を言うと、にっこり笑ってくれた
か、可愛い…っ
キュンときて思わず口説きモードに入るトコだったんだけど──
「揚羽君。落ち着いた所で、みんなに朝の事を詳しく説明してくれないかな?」
弥尋先輩の言葉でハッと我に帰った
あっぶな! さすがにみんなの前で口説いたらマズいでしょっ!
俺は内心焦りながらごまかすように笑って、弥尋先輩の言葉にうなづいた
「わかりました。えっと、みんなは変質者に追いかけられたとか聞いたと思うんですけど…本当は怒らせちゃった幼馴染から逃げてただけなんです」
「幼馴染?」
「幼馴染って、あの金髪の人?」
「怒らせたって、大丈夫でしたか?」
説明をした俺に、みんなが思うままに質問をしてきた
それを微笑ましく見ながら、聞かれたコトに返事をしてく
「もう、大丈夫ですか?」
『はい!』
『大丈夫です!』
「ならよかったです」
誤解は解けたみたいだね
これで一安心だよ♪
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