江路学園へようこそ!

□恋模様はヘキサゴン!
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「ん〜、いい朝だなぁ〜」

新鮮な朝の空気を吸い込んで、清々しい気持ちで人気のない学校までの道を歩いてく

今日は昨日の事もあるし、生徒会は休んでいいって会長からメールがあったからお言葉に甘えさせてもらった
オマケに役員の特権を使って少し遅めに登校中♪

生徒会役員は授業に遅刻したり欠席しても大丈夫ってすごいよね…
その分、赤点とか取ったら大変なコトになるらしいけどι

そんなこんなで昨日は久々にゆっくり寝れたし、気分は最高って言いたいけど…1つだけ不満がある
その不満は、隣にいる幼馴染の響介くんです

「なぁんで響介がいるのかなぁ」
「いや、ひなたに進められた本が面白くてな。徹夜したら寝過ごした」
「人にはうるさく言うくせに〜!」
「お前は遅刻とサボリが多すぎなんだよ」

そう言って、響介は俺の頭をベシって叩いた

「いたっ! 暴力はんたーい!!」
「あーもう、うるさい。置いてくぞ」
「はいは〜い、わかりましたよぉ〜」

そんなやり取りをしつつ教室に向かう俺たち

まぁ、たまにはこんなのもいっか‥なぁんて思いながら教室のドアを開けたんだけど──

「すいませ〜ん、遅れまし…た?!」

目の前の光景にピシリと固まる

「き、響介! 教室にマリモがいるよっ?!」
「あ、あぁ…」

教室に入って目に飛び込んできたのはモジャモジャ、モフモフしてる黒い固まり

いや、ホントはマリモじゃなくてマリモみたいな頭したヤツなんだけどね
俺、そのマリモ君にメッチャ見られてるι

え、なに? まさか知り合い?
マリモの知り合いなんていなかったはずだけど…

てか、目ぇ隠れそうなマリモ頭とマリモ頭に埋まりそうな黒縁メガネのせいで顔わかんないしι

「ね、ねぇ、響介知り合い?」
「あんな知り合いいねぇよ。てか、間違いなくお前を見てるだろ」
「俺もあんな知り合いいないよっ」

あぁ、もうホントなんなんだ!

「お前ら──」
「は、ぃ!」
「ぉ‥う」

うわー、声かけられたー!
なに? なんですか!?

「遅刻しちゃダメだろ!?」
「…っ!!」

俺達は恐々と耳を傾けるけど、続いたその言葉に耳がキーンとなった

こ、いつ…メッチャうるさいっ!!

「に、人間拡声器…」
「いや‥騒音マシーンだ…」

2人して耳を押さえながら痛みに悶える

「お前も遅刻しただろうが」

そうセンセーがツッコむとまたまた大声が

「オレは案内しに来たヤツのせいで──」
「う゛ぅ…っ」
「っ、ぅ…」

なんですか、なんなんですか!
1人ライブですかコノヤロウ!!

「あー、はいはい。わかった、わかった」
「おぅ! 分かればいいんだよ!!」
「……」

分かればいいんだよじゃないよ

そんな上から目線発言したらセンセーが黙ってな──って、あれ? 静かだな
もしかして、もう諦めるほど繰り返されてる感じ?

顔が怒りで引きつってるのになにも言わないってコトは、多分そうなんだろうなぁ
うん。お疲れ様です。

そう思いを込めて視線を送ると、死んだ魚のような目をしたセンセーが生暖かい微笑みを返してくれた

相当っすね、センセェι

「なぁ!」

そんな感じでセンセーと視線で会話してると、騒音マリモがまた声をかけてきた
耳の保護のために2人して耳を押さえながら距離を取る

「…なぁに?」
「あぁっ! 後ずさんなよ!!」

だったらその声の大きさどうにかしろよっ!
とは言えないから控えめに言ってみよ

そのまま言ったらもっと大きな被害に合いそうだからねι

「なら‥もうちょっと小さく話してもらってもいい?」

体が触れ合うくらい近づきながらそう言って、俺は甘ったるい笑顔を浮かべる

コレが効かなかったら俺、鼓膜破裂しちゃうかも…

「ぉ、おぅ…‥」

って心配したけど大丈夫だったみたい
なんか戸惑ってるような反応だったけど、声が小さくなるならなんでもいいよ

「で、なぁに?」
「あっ、お前名前は?」

声の大きさは許せる範囲になったけど、他と比べたらまだまだ大きい
ちょっとイラッとくるけど耐えられるし、また言ってうるさくされてもイヤだからスルーして答える

「‥揚羽だけど」
「下のも!」
「みつだよ。揚羽みつ」
「揚羽みつか! いい名前だな! あ、家はどこ? 学園の近くなのか? 出身中学は?」
「え、いや、その…」

ちょっ、ちょっと待ってよ!
質問多すぎじゃない?!
短時間でツッコんで来すぎだろ!!

「もう! ムシすんなよな!」
「いや、ムシじゃなくて!」
「あーもう、黙れ宮成みやなり」

ホントどうしようって思ってたら、センセーが呆れて声をかけてくれた

「だって俺が質問してるのに──「後でいくらでも聞けるし、今は自分の事を言え」

マリモの声を遮ってビシっと言うセンセー

今、はじめて頼もしく見えたよ、センセー!

「そうだな! 自己紹介するっ!」
「はいはい、さっさとしろー」

マリモは楽しそうに黒板に自分の名前を書きはじめた
その隙に俺たちは席につく

そしたら近くの子たちが心配そうな視線を投げてきたから、心配ないよって意味を込めて笑い返す

あぁ、赤くなって可愛い‥
癒される…

まわりの反応にほんわりしてたら、ちょうどマリモの自己紹介がはじまった

「オレは宮成 直すなお! なおって書いてすなおって読む!」

名は体を表すってウソだな

さっきのコトを振り返りながら心のなかでツッコんだ

「家の事情でこんな時期に編入してきたけど、友達いっぱい作れるよう頑張るからよろしくな!」
「というわけだ。で、お前の席だけど空いてる席に──「オレ、揚羽の隣がいい!!」
「あ゛ぁ?! そんな我儘──「あーげーはーのーとーなーりーがーいーいー!!」

うわっ、うるさっ!!
小学生じゃないんだからワガママ言って騒ぐなよ…

あぁ、またセンセーが死んだ魚のような目ぇしてるι

「あぁもぅ、わかった…揚羽の隣のやつ、空いてる席行け」

センセーがため息を吐きながらそう言うと、隣の子は最初嫌がったけど、空気を読んだのか渋々席を移動してった

そんで隣に来るゴキゲンなマリモ
これからの事を考えてついため息を吐いちゃってたんだけど──

「──これからよろしく、揚羽みつ」
「あ、うん…」

マリモのその一言に違和感が

あれ‥? なんか、雰囲気が違ったような──

不思議に思ってガン見してると、マリモがまた話しかけてきた

「なぁ、手違いでまだ教科書貰ってないんだ! 見せてくれよな!」
「…‥」

え…? かわん、ない?
‥うん、ウザい騒音マリモだ

「だからムシすんなって! オレ達、友達だからいいだろ?」
「えっ、俺たち友達なの?!」

どうやったらそうなるの?!
あれか、さっき密着して話しかけたからですか?!

俺、こんなうるさくてウザい友達イヤなんだけどι

「友達なの! だから教科書見せてくれな!」
「えぇー…」

それってマリモと机くっつけるってコトでしょ?
そんな近づくとか耳痛くなりそうだしイヤなんだけど

そう思ってのらりくらりと躱すんだけど全然引いてくれない

コイツ、うるさくてウザいだけじゃなくて空気も読めないんだね…
あ〜もう、ホントどうしよう

「ねぇ、宮成君。しつこすぎると嫌われるよ?」
「丞!」

イヤだけどやっぱり見せるしかないかなぁって思ってたら、見かねた丞が話に入って来てくれた

もう、丞ラブ!

「あ、宮成じゃなくて直って読んでくれよ! お前、名前はなんて言うんだ?」
「…話の通じない人に名前は教えたくないかな」

そう言って丞はにっこりと爽やかな笑顔を浮かべる

うん、教えなくていいと思うよ

「えぇー、教えろよーっ! てかお前、そんな腹黒い笑い方やめろよな!」
「‥腹、黒い?」
「おぅ! 普通に笑ったほうがいいぞ?」

マリモが清々しいほどの笑顔でそう言い放った
その瞬間、クラスのチワワくんやネコちゃんたちが怒ってマリモを罵る

あー、これは自業自得だね
放置しよ、放置

それより丞だよ
大丈夫かな?

何も言わない丞に心配になってチラって見たら、丞は俯いて体を震わせてた

えっ、まさか泣いて…るわけないな

「考えておくよ、直君」

やっぱりそうだったね
丞、すっごい楽しそうな顔してサラリと返してるよ

って、丞‥今、マリモのコト名前で呼ばなかった?

周りも気づいたのか、一気にシーンとなった

「おぅ!」
「オレは久佐之丞。よろしくね、直君」
「よろしくな、丞! あ、オレの事は直でいいぞっ!」
「…う〜ん。嬉しいけど、直君って響きが可愛いから直君って呼ぶよ」
「そ、そうか?」
「うん」

会話が一段落したみたいですね

俺は小さくため息を吐いて、次に来る衝撃に耐えるために耳を塞ぐ

『いやぁぁあっ!!』
『久佐之くぅぅんっ!!』
『名前呼びなんてやめてぇぇええっ!!』

まさに阿鼻叫喚って感じだなぁ…

地味にライフが削られてってる俺は、乾いた笑いを浮かべながらただその光景を眺めてた

でもその時、俺の耳になにかがブチ切れる音が聞こえた
その次に聞こえたのはなにかを叩きつける大きな音と地を這うようなセンセーの声

「てめぇ等‥いい加減静かにしろよ…‥?」

セ、センセーの瞳孔開きまくってるよ…っ!

クラス全員、死を覚悟した瞬間でした






つづきはこちらへどうぞ。
 

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