S hort n

□ワガママなあの子
1ページ/2ページ


大切な親友といつもの様に一緒に帰って。
いつもの様に部屋に寄って。
いつもの様に帰るもんだと思いきや──

「俺、お前のワガママ聞くの好きなんだよな」
「はぁっ?!」

親友である隆人(たかひと)の一言に、こんなに驚くことになるなんて思わなかった。
思わず持っていたポテトチップスをベットに落としてしまう。

俺は、思っているよりも親友のことを知らなかったらしい…
いや、でもまさか──

「M…?」
「じゃない」

違ったみたいだ。
良かった。

「叶(かなう)さ、物凄いワガママだろ?」
「あぁ、うん…」

隆人がベットに落ちたポテチを拾いながら言う。
それを口元に持ってこられてパクリと食べた。

見た目によらず面倒見良いんだよな、こいつ。
それでもあんな一言が出るとは…

だってこいつは、いつも俺がワガママを言うたびにものすごく嫌そうな顔をする。
まぁ、ぶつぶつ言いながらも聞いてくれるんだけどさ…

だから俺は、コイツがこんなこと言うなんて思いもよらなかったんだ。
でも、思いもよらないことはもっとあった。

「わかってるんだからさ、嫌だったら断るか、聞かなきゃいいだろ?」
「う、うん」
「それなのに何でワガママを聞いてたかっていうと…叶のことが好きだからなんだ」
「うん…って、えぇっ!」
「だから、付き合ってくれないか」
「い、いやいやいや!!」

す、好きって!つ‥付き合ってってっ!
コイツいきなり何言ってんだよっ!!

「ちょっ、ちょっと待てよ!お前ワガママ聞くの好きって言ったけど、俺がワガママ言うと嫌そうな顔してたじゃないかっ!」
「お前の、ワガママな」
「そんなのどっちでもいいよっ!!」
「どっちでも良くない」

そう言って真面目な顔をしてこっちを見てくる。

くそぅ!ちょっとドキってしちゃったじゃないか…っ!

「わ、わかったから!何でだよ…」
「それは、俺が叶のこと好きだって気づかれたくなかったから。それと──」
「それと?」
「お前にまったく意識されてないと思ったら悔しくて」
「…っ!」

その言葉を聞いた瞬間、顔が真っ赤に染まった。

だって、そんなの──

「俺のこと、すごい好きみたいじゃん…」
「好きだよ」
「なっ、そ‥っ!」

俺の小さな呟きにきっぱりと断言されて、言葉が出なかった。
口からは意味の無い音が紡がれるだけ。

「なんだ、まんざらでもないみたいだな」
「いや、そんなことは──「顔赤くしといて?」
「…っ!」
「あ‥因みに俺、フられたらお前の親友やめるから」
「えっ?!な、なんで…!!」

いきなり言われたその言葉は、動揺するには十分すぎる。

「何でそんなこと言うんだよ!!」

俺は隆人の肩を掴んで揺さぶった。

だって、初めて出来た親友で──
ずっと一緒にいて──
これからもずっと一緒だって思ってたのにっ!

「だってさ、フられたのにずっと一緒って…辛過ぎるだろ」
「でも…っ」
「叶が嫌でも駄目なんだ。ごめんな…」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ