東條学園〜恋愛騒動記〜

□恋愛騒動記1
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平凡な日常を望んで、そんな毎日に満足しながら日々過ごしてたのに…と、俺は廊下にある大きな窓から空を眺めて盛大なため息をひとつ吐いた。

このため息は母親ゆずりの女顔のせいでもねぇし、なかなか伸びない身長のせいでもねぇ。
原因は、昼休みがはじまってすぐにされた放送のせいだ。

なんでかっていうと、その放送が──

『『1年B組の藍川 真琴(まこと)くん! 生徒会からじゅーよーな話しがあるので、昼休みに生徒会室まできてくださーい! いじょー、北条(ほくじょう)兄弟でしたー♪』』

なぁんてふざけた放送なのに、内容がとんでもねぇものだったからだ。

あぁ、気が滅入る。

いつもなら親友の佐々本(ささもと)と一緒に優雅なランチタイムを過ごすはずだったのに…
邪魔されるわ、大好きなDX焼きそばパンは買い逃すわ、悪いことばっかり起こりやがる。

そりゃ、ため息のひとつでも吐きたくなるってもんだよ。

嫌々ながら目的の生徒会室前まできて、何度目かわからなくなったため息を吐く。

なんで俺がこんなに嫌がってるかっていうと、この学園で生徒会に呼び出しをくらうってのは相当なことだからだ。

俺が通ってる私立東條(とうじょう)学園は金持ち学校だけど進学校でもあって、第一線で活躍できる人材の育成に力を入れてて、そのために学園のほとんどのことを生徒に任せてる。

だから生徒の代表である生徒会は学園を牛耳ってるようなもんで、目をつけられるってことはイコール死なんだ。

それなのに突然、名指しの呼び出し。

こんだけ嫌がるのもわかるだろ?
なんの用かまったくわかんねぇしなι

目立つの好きじゃねぇからなんかした記憶はねぇのに…本当なんの用だ?

まぁ、こんなこと考えててもなにかが変わるわけじゃねぇか。
てか貴重な昼休みが減るし。

「よし、さっさと終らせて昼飯食べるか!」

俺はそう気合いを入れて、なるべく存在感を薄くする。
まぁ、名指しで呼び出しされといて今さらって感じだけど、一応な。

ちょっと長めの前髪は教室出るときに下したし、服装も乱れてないっと…最終確認よし。
完璧な一般男子高校生ぶりだ。

それからいくぞ! って心の中でつぶやいて、ちょっと緊張しながら扉の横にあるインターフォンを押す。

──リンゴーン──

『‥はい』

チャイムのあとしばらくして、インターフォンから凛とした声が聞こえてきた。
俺は少し緊張しながら声をかける。

もちろん敬語な?
無駄な敵は作らない主義っす。

「えっと、放送で呼ばれた藍川ですが…」
『あぁ、中にどうぞ』
「失礼します。──うわ、ぁ…」

そう言って中に入ってソイツを見た瞬間、俺は思わず見とれちまった。

だって、だってしかたねぇじゃん?
コイツなんか髪とかサラサラで黒髪に太陽が反射してキラキラしてるし、顔も涼しげな目とかスっと高い鼻とか薄くて形のいい唇とかが小さな顔に整いすぎだろ! ってくらい完璧に配置されててきれいだし──

なんか、作りものみたいだな…

しかも眼鏡だよ、眼鏡。
優等生ファッションかよ!

でも変じゃなくて…むしろ、似合ってる。
優等生眼鏡にありがちの、変な弱々しさを感じない。

俺、こんなにカッコイイやつはじめて見たかも…

でも、神はコイツに二物以上を与えすぎだろ?!
俺にも少しは与えろよ! 身長とか、身長とかをさっ!

「──大丈夫ですか?」

あっ、いけね。ついしかめっ面になってたι
前髪で隠れてるからわからなかったと思うけど、気をつけないとな。

よし、気を取り直して!
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