ワンダーランド

□宇宙(そら)の瞬き
1ページ/1ページ

その日は朝から雨が降っていた。
俺は何かが知らせたのか、一人で荒野に向かってしまった。それが、失敗だった。
「ゲッターァァァァアア!!」
「!?」
突然空から声が聞こえたと思ったら、奇襲に遭った。
「会いたかったぜ、ゲッターロボ!」
「うるせぇ!」
キバの野郎か!まさかこの俺が奇襲に遭うとはな………!
「ゲッターロボを俺に寄越せよ!てめぇには勿体ねぇ!」
「っざけんなぁ!」
ゲッタートマホークで切り掛かるが、流石キバ。俺と互角とはな………!
「うぉ!」
ゲッターの背後で攻撃だと?!誰だ!
「ガラン………」
「キバ、加勢に来たぞ」
「んなもん要らねぇよ!」
二体一、か。大そうなこったな。………正直、勝てる気がしねぇ。最強の俺でもよ。本当は二体一じゃねぇしな。キバの部下に、ガランの部下が居やがる。こりゃ、万事休すってか?
「ガランのおっさんに首取られる前に、俺が取ってやるよ!」
「やらせねぇ!」
金属がぶつかり合う音が響く。
こんな所で俺は負けねぇからな!俺はレバーを思いっ切り引いて、放った。一発キバの機体に殴りつけた。
今だ!と思い、俺はカイザーに連絡を取った。多分奴は今日、訓練をしてる筈だ。
「甲児!応答しろ!」
だが返答は無い。何故だ………?確かに今日は訓練の日だった筈だ。その時ガランがゲッターの首を掴んで来ていた。
「離せよ!」
「その首、貰った!」
トマホークで切り掛かろうとしたが、手足をこいつらの部下に抑えられちまってる。これじゃブラックゲッターが………!俺は色々と操作レバーを動かしていたが、何一つ動かない。負けを一瞬悟った時だ。突然空から何かが降って来てガランとその部下を切って行った。
「!?」
一瞬過ぎて、一体何が降りて来たのか見えなかった。煙が晴れると、そこに居たのは、カイザーだった。けど甲児の方じゃねぇ。あの地獄の二人だ。
「大分苦戦してたみてぇだな、ゲッター」
「うるせぇよ。………そっちは任せた」
「言われなくても、やってやるよ」
ガランをカイザーに任せて、俺はキバをぶちのめしに向かった。だが、キバはそこには居なかった。
「ガラン!一旦引くぞ!晴明がお呼びだ!」
「………そうか」
「ブラックゲッターにカイザー!次会ったらその機体、頂くからな!」
それだけを言い残して、立ち去ってしまった。
「んだよ。俺達の出番は手助けだけかよ」
カイザーの骸骨部分から、海動が出て来た。
「おいおい竜馬さんよぉ、最近腕が鈍ったんじゃねぇのか?」
「………ほっとけ」
確かに海動の言う通り、俺は腕が鈍っている様な気がしていた。ゲッターの出動が無いからって、ここまで鈍るとは思ってもいなかった。だから荒野に出て、特訓をしようと思ってたんだ。なのにそこにキバの野郎が来て、ガランも来て………。色々と計算外だったんだよ。
「竜馬さん、俺達に任せてはくれないのか?」
真上は海動と違って、俺に敬語を使う。
「任せてぇけどよ、………俺も、戦いてぇんだ」
「けど貴方が死んだら、皆が悲しみます。特に、神司令が」
んな事は分かってる。けどよ、俺だけがゲッターに乗れてねぇって、カッコ悪いじゃねぇか。それに、何も出来ねぇ何て。
隼人も弁慶も、いつも研究所で何かをしている。俺はあの二人みてぇに何か出来る訳じゃねぇ。だからゲッターに乗って戦うんだ。そうじゃねぇと、武蔵に悪いからよ………。
「………ならば俺達と少し、特訓でもしましょうか」
「真上?」
「良いだろ?海動」
「おう!先輩が死なれたら、困るからなぁ!」
本当かよ。いや、嘘でも嬉しいぜ。
パイルダーに乗り込む二人。俺はブラックゲッターに乗り込んで。

カイザーは本気で俺と戦ってくれた。その時がとても楽しかった。



俺達の特訓は夕方まで続いて。いつの間にか雨も上がっていた。
「久々に、こんなに暴れたな!」
辺りを見て見れば、荒野はもう穴だらけだ。
「………少々やりすぎたな」
「はは、そうか?」
パイルダーから出て来る二人。俺もゲッターから出て来た。
「………帰るか」
「ああ。腹減っちまった」
海動らしいな。面白れぇ。
夕日、か。………綺麗とは思えねぇ。年のせいか。って、んな訳はねぇか。
「………この世界は不思議だな」
「真上?」
「見て下さい、竜馬さん。空を」
夕日、じゃねぇのか。俺は真上が指を指した方向を見つめた。確かにそこの空は、可笑しい。
「………右側が夕日で、左側が宇宙……?」
「宇宙、までは行きませんが。とにかくすごい星の数ですね。普通は、こんな事起きません。まして、まだ日が暮れていません。………この事を神司令や博士たちは知っているでしょうか」
「多分知らねぇ」
「………ならば、知らせましょう。俺も、色々と気になります」
真上は研究所に連絡を取っていた。俺はじっとその星空を見つめていた。
もしもキバやガラン、Dr.ヘル達を倒したら、次の敵は宇宙に居るんじゃねぇかって、俺は思っていた。だったらやってやるよ。掛かって来いってんだ。
「………竜馬さん、戻りましょう。帰還命令です」
「おう、分かった」

何が相手だろうが、俺は戦ってやる。
己の為に、己が生きるためにな。












END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ