新ゲ

□哀しみと言う鼓動
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流竜馬。年齢20。空手の有段者ではあるが、昇段試験で対戦相手を半殺にし、空手界を追放された、か。コイツ、喧嘩しかしてねえんじゃねえか?
この前、新宿へ行った時だ。俺も同行していたのだが、ヤクザに絡まれた。聞けば、親父さんが残した多額の借金を返していないとか。一体、竜馬の過去に何があったと言うんだ………?
直接本人に聞いてみるか?いや、アイツが話すとは思えない。
俺は自分の部屋を出て、ゲッターのある所へ向かった。

何処からか湿気のにおいがした。雨か……。





「よう」
「竜馬……」
首にタオルをかけている竜馬がいた。タンクトップ……。風呂でも入っていたのか。
「………コイツ、恐ろしい存在だよな」
腰ぐらいしか無い鉄格子に腕を置いて、ゲッターを見つめながらそう言う竜馬。
「鬼を倒すためにあるけど。もしこれが貪欲な人間の手に渡ったら、戦争だって起こせる。……弁慶の言う通り、壊すべきなのかな」
本当は、それが良いのだろう。ゲッターがあるから鬼も現れる。そう考えているのは、みな同じだ。
「……………竜馬、一つ聞いてもいいか?」
「ん?」
「……お前、借金ってどのくらいあるんだ?」
「……1億」
俺は桁違いな数字を聞かされ、言葉を失った。
「親父、さ。道場を経営してたけど、人なんか来ねえし。……何か、死んだ母さんが大事にしてた道場らしい。俺が生まれる前に死んじまってるから、詳しい事は知らねえけど。俺もそう聞かされていたから、売れねえし。……親父、博打とか色々やっててよ。優しかったんだけど。もう疲れた、とか言っててさ。………俺が15ぐらいの時に、自殺した」
竜馬……。
「…まあ、もう親父も母さんも居ねえし。道場も、今頃どうなってるか知らねえし……」
「いいのか?見に行かなくて」
「いい。……戻ったって、誰も居ねえんだ。居るとしたら、ヤクザの連中さ。それに」
竜馬は俺の方を見て来た。
「今の俺には、お前が居るしよ」
笑顔でそう言われた。コイツ、こんな笑顔出来たのか………。
「さーて。弁慶の所行って、お菓子貰うか〜」
「竜馬」
俺は竜馬を呼び止めた。
「……ずっと傍に居ろ。何があっても、死ぬんじゃない」
「心配ご無用!死ぬ気はねえさ」
俺は竜馬を抱き締めていた。
やつのぬくもりを、感じたかった。
「……隼人の部屋に行ってもいいか?」
「ああ。………弁慶の所に行かなくていいのか?」
「今度にする。……今は、お前と居たい」
こんな素直な竜馬。見た事があっただろうか。己の過去を話したからこうなったのか。まあどちらにしろ。俺からしたら、とても嬉しい。
「隼人。俺の過去を話したんだから、お前の過去もいつか聞かせろよ?どんだけ悪行をやったのか」
「そうだな………」
俺は竜馬から離れ、部屋に向かった。

「雨……」
部屋へ向かう途中の廊下で、窓があったので雨が降っていると言う事を確認した。
「…………だから俺の気分が優れねえのか」
俺もだ竜馬。
雨は、哀しみを生むからな。
「…………親父が自殺した日も、雨が降ってたっけ」
窓の外を見つめる竜馬。その瞳はとても悲しそうだった。
「竜馬。行くぞ」
「ん……」
竜馬の心が、重い。それは雨のせいだと俺は思う。いつも強がってるコイツが、ここまで弱くなるとは。………まあ、誰でも自分の過去を話せば、そうなるか。
仕方ない。今日は、一緒に寝てやるか。俺の愛する竜馬の為だ。


俺の部屋に着いて。
竜馬は当たり前のように俺のベッドに向かった。
「やっぱ、隼人のベッドが良いな〜」
「皆同じだろ」
「そうだけどさ。何か、こっちの方がふかふかしてるって言うか」
ったく………。
「なあ、俺、一つ気になってる事があんだけどよ」
「?」
「隼人ってさ。誕生日いつだ?」
何だ、急に。俺は自分の誕生日を教えた。
「へぇ〜………」
「どうした」
「別に。特に意味はねえ」
お前らしいな。
「………俺寝る」
「まだ9時だぞ」
「夜だろー。もう寝る時間だ」
そう言いながらこいつは、俺のベッドで寝始めた。呆れるしか無いだろう。コイツのこう言った態度には。
俺が竜馬を守らねばならない。コイツの、幸せを守るために。








END(あとがき)
竜馬が、もはや20歳では無い気がしますが……。まあ気にしないで下さい………。隼人も優しすぎですよねー。けどきっと二人共、イチャイチャしてますよ、何処かで!
オリジナル設定の過去も、ノークレームで。こんなだと思います……。

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