新ゲ

□誰の為でもない
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隼人が珍しく、俺の部屋に来た。何しに来たのかと思ったら、付いて来いって。けど、厚着をしろって言われた。そっから察しがつくように、外に出んだろ。

さみー……。
冬の夜は、特に冷える。しかも俺らが居る場所は、森の中だろ?余計に寒い。
研究所の屋上で、隼人の隣に向かう。
「………すまんな、連れ出して」
「良いって事。暇だったし」
鬼が来ねぇ夜は、暇で。俺は隼人みてぇにパソコンとか得意じゃねえからな。
「ってか、どうした?こんな真夜中に」
そう。今の時刻は12時半を過ぎている。
「……今日、流星群の日」
「えっ?」
「朝言っただろう?……明日の真夜中、12時過ぎぐらいから、流星群だって」
あー、確かそんな事を言ってたっけ。忘れてたわ。隼人が鉄格子の所に来い、って言った。腰位までしかない鉄格子。そこに俺は肘(ひじ)を置いた。
「………普通に、空が綺麗だな」
「ああ。森の中だからな」
都会じゃ、こんな星空は見れねぇな。ま、得って言うもんだ。もう都会でこんな、満天の星空を見れねぇんだよな。そう思うと、哀しいな。
「………お。今光ったぜ」
「あぁ………」
俺なんかと見て、楽しいのかね?俺、気の利いた会話とか出来ねぇぜ?
「………竜馬」
「ん?」
「……何でも無い」
んだよ隼人さん。そんな、もったいぶんなよ。俺、お前の恋人だろ?
「……………綺麗だな」
「………お前の方が綺麗だ」
「……ばーか」
何か、キザっぽい台詞を言ったから、ちょっとは照れてしまった。だってよ、いつもんな事言わねえだろ?
「………あ、また光った」
「……何か願わないのか?」
「ん?………そーだな……。あ、なら。これからも隼人とずっと一緒に居られますように」
けっ。我ながら何と恥ずかしい台詞だろうか。ちらっと隼人の方を見て見る。うぉ!俺を見んなよ!
「………何?」
「……抱き締めても良いか?」
「んな事、聞くなよ………」
俺は鉄格子から腕を放して、隼人に抱き着いた。
「………あったけぇ」
「ああ。………竜馬」
俺をじっと見つめる隼人。馬鹿野郎、恥ずかしいじゃねぇか。
「………んだよ」
「……可愛いな」
「っるせーよ」
俺がそっぽを向くと、隼人は構わず、抱き締めていた。
「………お前の匂いがする」
「血の匂いか?」
「いや………。石鹸の良い匂いだ」
「なら、俺の匂いじゃ無くね?」
「………」
そこで黙んなよ。俺は隼人から離れようとしたら、隼人は更に強く、抱き締めて来た。そして少し俺を離して、俺の顎を掴んで来た。まさか、とは思っていたけれど。キスをして来た。けど、触れるだけだった。
「………物足りない顔をしているな」
「ばーか。んな訳あるか」
隼人はまた俺を抱き締めて来た。
「……このまま、時が止まればいいのにな」
「………あぁ」
本当に、それは思う。俺は、隼人と一緒に、永遠に居たいと思う。どんな事があっても、決して離れず、ずっと傍に居て。
俺達が抱き締めあっているうちに、流星群は数を増やしていた。
「………なあ、流星群、見せてくれねえの?」
「……」
かなり残念そうな顔をしていた隼人。俺を離し、俺は星空を見上げた。
「うわー………」
何だろうな、言葉に表せられねえや。とにかく、すっげー綺麗って事。
「………いつも、こんだけある星空の下で、暮らしてると思うと、人間なんかちっぽけなもんだよな」
「………………」
「何で黙ってんだろ」
「いや………。お前からそんな台詞が出て来るとは」
わりぃかよ。俺が、理屈的な事言って。
「………」
俺は無言で隼人の方に、俺の手を隼人の手の方に近付けてみた。するとそれに気付いたのか、隼人が俺の手を握ってくれた。
「………冷てぇな、お前の手」
「……だが、それをお前が温めてくれるんだろ?」
「………おぅ」
照れてしまう。そんな事を、言われたら。
ぎゅっと、お互いに握って。互いの温もりを感じて。俺はそのまま隼人の方に身体を預けた。
「竜馬?」
「………」
俺は無言のまま、隼人に寄り添った。
マジ、時止まってくれねぇかな〜。
何て思ったり。
「………なあ隼人。俺、さ。本当にお前の事が好きみてぇだな」
「そんな事、今更ではないだろう?………あの時から、俺はお前の事が好きだ」
「隼人………」
やべぇ。隼人が、格好良すぎる。コイツってこんなんだったけ?驚く程に、格好良く見える。それは多分、このシチュエーションも、理由の一つだろうけど。
「………俺がゲッターに乗るのは、竜馬、お前を守るためだ。誰の為でもない。お前の為だけに戦う」
真剣な眼差しで、俺を見つめてそう言う隼人。俺は、そんな隼人から目を離せなった。
「……おう、そうか」
それだけしか言えない。ってか、恥ずかしくて言えねえんだ。
素直に、ありがとうって。
ぶっきら棒な俺には、態度でしか示せねえんだ。
「………それが、俺の願いだな」
あ、流星への願いだったのか。
「だが俺は、それを実行する。実行し続ける」
「………なら俺も」
更に手の平を、ぎゅっと握る。それに隼人も応えて。
「………もう一回だけ、抱き締めても良いか?」
「………好きにしな」
とか言いつつ、俺から隼人に抱き着く。
「……お前からとは」
「っるせーよ。………黙ってろ」
隼人を抱き締める。その度に、高鳴る心臓の鼓動。こんな気持ち、隼人にしか持てねえや。多分これから先も。
「………竜馬、」
俺を見つめる隼人。俺も隼人を見つめた。
俺からするか。
俺から隼人にキスをした。勿論、外だから触れるだけ、だけれど。
「………お前からとは、どう言う風の吹き回しだ?」
「………………さぁな」
ま、良いじゃねえか。
「………そろそろ中に入ろうぜ?さみぃよ」
「ああ、そうだな」
んで、中で続きってか?俺も物好きだなー。



「隼人」
「何だ」
「好きだぜ。誰よりも、な」
「………俺もだ。竜馬」
「へへ、ばーか」








END(あとがき)
冬の夜空の下でイチャイチャしてますねー。多分二人の所だけ、春ですよ。
もう竜馬が可愛くて……!すみません、自己満で。

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