ゲッターロボ オフェル

□-Truth is stranger than fiction.-事実は小説よりも奇なり
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楓太が目を覚ましたのは、あれから5時間あまり後だった。
見慣れない部屋だ。全てがコンクリートで覆われていて。窓一つない。嫌な予感はしていた。自分は、変な所に連れて来られたのだと。幸いな事に手足を縛られると言う事は無かった。そのコンクリートの部屋を歩いてみた。ドアが何処にあるのかさえ分からない部屋。此処は一体何処なんだ?何故自分はこんな部屋に居る?風呂から上がった後に、突然変な男に襲われて………。はっとする楓太。そうだった。自分は変な男に襲われていたのだ。
楓太が頭を押さえている時だった。何処からか、声が聞こえた。
『起きたか、人間よ。』
「何者だ!何故俺を攫った!」
『………我らは太古より昔、地球に存在した、神からの使者、バラルだ。』
「バラル?」
バラルとは混乱と言う意味だ。だが楓太はその意味を知らず。
「何だか知らねぇけど、俺に何の用だ!」
『………お前はそこで大人しくしていればいいのだ。』
それだけを言って、その音声は聞こえなくなった。
「何なんだよ………!くそ。」
楓太は吐き捨てる事の出来ない怒りを、壁にぶつけていた。







皇希と遥真は、ザイン号、ハザン号に乗って、長崎へと向かっていた。
「………遥真。奴らの目的は何だと思う?」
「さぁ………。一つ言える事は、あのリューリクとは言う野郎とは違うと言う事だな。奴等、ゲッター線を狙っているんだろう?けど楓太を攫った奴は楓太にしか目が無かった。」
うーん、と唸る皇希。本当に奴らの狙いは何なのだろうか。楓太を攫って何をしようと言うのだ。皇希はとにかく、奴らの事を知りたがっていた。情報が全くないのはこちらだけだろう。
「………遥真。長崎の指定されたエリアに着いたら、真っ先に楓太救出だ。」
「言われなくても分かってるさ!」









楓太を攫った男は、リューリクに向かって拳銃を突きつけていた。
「失敗したようだな。」
「良く言う!俺達を、囮に使ったくせによ………。」
リューリクも拳銃を彼に突きつけていた。
「何が目的だ!楓太を、………どうするつもりだ!」
「貴様には関係の無い事だ。」
「くそ……!」
今のリューリクには、成す術がなかった。自分の部下を、こいつらに取られたのだ。奴らは命令さえすれば、誰にだって従う。勿論一番初めに命令をした者にしか従わないのだが。彼らはリューリクの部下の命令コードを書き換え、自分達に従うようにしていたのだ。
「………貴様のような、外部の者がこの地球を乗っ取れるはずが無かったんだ。」
「!まさか俺の行動を見ていて………。」
「そうだ。だから俺は、お前の部下を俺達の者に出来たのだ。………期待はしていたんだがな。」
引き金を引く男。リューリクも引き金を引いていた。その時だった。突然サイレンが鳴り響いた。
「!?ちっ。こんな時に………。」
『侵入者アリ!直チニ配置ニ付ケ!』
機械の声が鳴り響く。その男は拳銃をしまった。
「お前も来い!死にたく無ければな。」
此処は大人しく従うか。リューリクは彼について行った。
「………名前ぐらい教えろよ。」
「……ヤゼル。」








楓太は聞こえて来たサイレンの音に、とても喜んでいた。多分遥真と皇希だろうと、思っていたのだ。
「皇希、遥真………。」
二人の名を呟いた時、突然扉が開かれた。
「………誰だ。」
扉の向こうに居たのは、助けでは無い事ぐらい分かった。明らかに格好が違うのだ。黒いスーツを着ていた。だがその男の隣に、あのリューリクが居たのだ。
「!お前………。」
「………。」
無言のリューリク。ヤゼルは楓太に歩み寄った。
「信崎楓太。あの御方がお待ちだ。一緒に来てもらおう。」
「ふざけんな!」
得意の空手でその男に挑んだのだが、意図も簡単に防がれてしまった。
「なっ………。」
「無駄な抵抗はするな。お前を無傷であの方の前に届けなければならないのだから。」
拳銃を突きつけれる。ぎゅっと奥歯を噛み締めて、楓太はその男、ヤゼルに従った。リューリクはその光景を見つめる事しか出来なかった。


楓太が連れて来られ場所は、地下室だ。あのコンクリートの部屋からそう遠くは無い場所。地下室の割に暗く無く。とても明るい。ヤゼルに腕を掴まれながら、楓太は奥深くへと進んで行った。

そして着いた場所。そこには、如何にも敵だろうと思う人物がいた。
「………貴様が信崎楓太か。」
「んだテメェ。」
相手を睨み付ける楓太。楓太は手足が自由なので、その男に殴り掛かった。誰もそれを止める者は居なかった。それもその筈。その男は、楓太の攻撃を片手で止めたのだ。そして楓太を吹き飛ばした。
「な、に………。」
「弱いな人間。貴様のような人間が、私のような神に勝てる筈がない。」
「神、だと………?」
うつ伏せになりながら、その男を睨む楓太。こんな男が神だと言うのか。見た目は、人間と同じなのに。
「信崎楓太。我々の仲間になれ。」
「誰が………。」
こんな奴の言う事に従うものか!楓太はふらふらと立ち上がった。
「てめぇのような、自らを神と名乗る男の仲間になる気はねぇ!」
「………そう言うと思った。」
目でヤゼルに何かを言った男。そしてヤゼルが楓太の腕を掴んだ。
「!離せ!」
「強引に仲間にするまでだ。」
それを聞いたリューリクは、拳銃を取り出してヤゼルの背中を撃った。
「!貴様………。」
倒れるヤゼル。
「楓太!逃げろ!」
まさかあのリューリクが助けてくれるとは思わなかったのだが。此処は彼の言う通りにした方が良いと思い、走り出した。ヤゼルは慌てて拳銃を取り出し、リューリクを撃った。だがリューリクはそれを避け、彼もその場から逃げ出した。
「くっ………!」
立膝を立てて、ヤゼルは息を荒げていた。
「………ヤゼルよ。お前はもう用済みだ。」
「!待って下さい。今のは………。」
彼が最後まで言える事は無かった。その男はヤゼルに向かってナイフを投げた。そのナイフは頭に突き刺さったのだ。
「………クローヴィスの者め……。まぁ良い。奴は一人だ。」
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