デビルマン

□それが嵐の中でも
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それは、突然だった。家の電話が鳴り響いていて。俺が出ると、その声の主に驚いた。
了からだった。そっか、教えてたっけ。何でも至急来て欲しいとか。もう直ぐで深夜になっちまうけど、良いか。俺は美樹ちゃんに何とか説得をして、走って了が待つ廃墟へと向かった。その時、こう言われた。
「天気予報で、春の嵐が来そうだから。なるべく早く帰って来て」
春の嵐………。まさか、な。



了が俺に指定して来た場所。
町の外れにある、病院の廃墟だ。本当は、こう言う所幽霊とか出るから行きたくないんだけど………。俺はデビルマンになったんだし、大丈夫。
廃墟の扉を開いて、真っ直ぐ進むと、一つだけ灯りがある場所を見つけた。多分了だろう。行って見ると、確かに了だ。
「すまんな明。こんな時間に」
「良いよ。君の頼みだし。で、どうかした?」
「ああ。こっちに来てくれ」
そう言われ、了の方へと近付く。
「………それにしても、薄気味悪いな。良くこんな場所に居られるよな」
「慣れだろう」
「慣れって………」
「………此処の病院、一ヶ月前まではちゃんと営業していたんだが。何故か突然辞めたんだ。何故だと思う?」
「………デーモンが、出たのか?」
「ああ。………患者の一人からな。そしてどんどん病院に居る奴を食って行ったらしい。……そして、今も此処に居る」
それを聞いた瞬間、俺は戦闘態勢に入った。己の気配を消し、相手の気配を確かめないと。
「………明。そいつを殺さず捕まえてくれ。聞きたい事があるんだ」
「あっあぁ」
了にしては珍しい発言だな。まあ良いか。

了を一旦廃墟から出して。俺は完璧に気配を消した。そして、奴が来た。
「そこか!」
デビルマンとなれば、一撃でも効く。それに、相手を捕まえる事だって出来る。その捕まえた相手は、鴉の頭をしていて、それ以外が人間だ。
「ひぃ!あ、アモン!助けてくれ!」
「なら、言う事を聞け!」
俺はそいつを捕まえたまま、廃墟の外に出て、了の所に連れて来た。
「お前か。この病院を血の海にしたのは」
「そうだとも!人間に恐怖を与えるためにな!」
「………お前達の仲間で、サマエルと言う悪魔を知っているか?」
「サマエル?………あぁ、あの神の毒、目の見えぬ神と呼ばれている奴の事か?名前だけだがな。そいつがどうかしたのか?」
「今何処に居るか、知っているか?」
「知るかよ。奴の存在は、幻とも言われてる程だ」
「そう、か。なら明、殺れ」
「え、ちょっと助けてくれよ!」
お前がこの病院の人を殺した。それは、大きな罪だ。言われなくても初めから殺すつもりさ。俺はそいつを殺し、元の姿に戻った。
「………それが、難点だな」
「ん?」
「変身すると、服が無くなる事」
「…………ね」
こうなると分かっているので、いつも了に代えの服を持って来てもらっている。俺はそれに着替えて、一息ついた。
「了。その、サマエルって何者なんだ?」
「………暫し、あのサタンと同一化される悪魔だ。一説では、堕天使と言う説もある。………そいつに会えれば、もしかしたら、」
そこまで言って言わない了。すると俺の頬に何かがあった。
水だ。あ、美樹ちゃんが嵐が来るとか言ってたっけ………。
「了。多分このまま降り続ければ、嵐になるよ。帰ろう?」
「ああ………」
俺が了の手を取った時だった。突然の雷。その後突如近くにあった木が倒れた。そして突風も吹き荒れて来た。
「!この殺気………。了!俺から離れるな!」
「え?」
またデーモンだ。嫌でも分かる。鋭い殺気を立てて、俺達の様子を伺っている。何処だ………?俺が空の方を見つめると、突然何かが降って来た。慌てて了を押して、俺はその降って来た者に向かって、手を翳し、受け止めた。やはりデーモンだった。けど、死んでる。と言うより焦げてる。
「………明。そいつ、雷にでも当たったのか?」
「多分………。馬鹿だな」
うん、殺気もコイツだ。俺はその死体を投げた。
「運が良いのか何やら………」
呆れてる了。まあ、だよな。俺でも呆れるよ。デーモンって、こんなに脆かったっけ。
それよりか、いつの間にか雨もすごく降っていて。風も強くなっていた。
「おい了!戻ろう!今日見たいな天気なら、美樹ちゃんも泊めても良いって言うだろうし」
「………そう、だな」
俺は了の手を取って、走った。

「全く、俺も運が付いていないな」
走っていると、突然了がそんな事を言って来た。
「明とつなげたのが、こんな嵐の中何てな」
「おいおい、何を言ってんだよ」
ははっと笑う俺。それに応えるかのように了も笑う。
「ほら、もっと走らないと!」
「ああ」
この雨じゃ、風呂に入った方がよさそうだ。………って、今何時だろう。そこが心配。場合によっちゃ、家に入れないかも。最近美樹ちゃん、俺が外に行くと怒るんだよな。私も一緒に行くとか言い出す時もあるし………。それは困る!戦いの足手まといになるだけだからな。
「明。協力してくれて、ありがとう」
「当たり前だろ?」
そう、了の頼みなら当たり前に聞く。それが、親友ってもんだろ?


「(明。嵐の中じゃなくて、今度はちゃんと手をつなごうな。そして、………)」


隣で何か了が言った気がしたけれど、今はそれどころじゃないから、聞かなかった。














END(あとがき)
初めてのデビルマン小説……。OVA版の明は可愛いですよね!それに了様が美しいです。

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