デビルマン

□凍える夜に紛れて
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朝から雪が降る、とても寒い時期だった。
俺は明と一緒にその雪の中を出掛けたいがために、デーモン探しに町へ行こうと嘘を付いた。

そして、夜の町へ。
冬の夜の町は、何処か寒そうに見えた。俺は明とくっついて、歩いていた。
「それにしても、冷えるな……」
「ああ。………寒」
別にそんなに寒くないのに、俺は明の手を握りたいがために。明の手を取って、つないだ。
「了の手、冷たいな」
「寒いんだ」
「なら、俺があっためてやるよ」
その笑顔が、心に突き刺さった。
俺の明。
俺だけの明。
信用出来る人間はお前だけで、それで良い。
「………了?」
「ん?何だ」
「あ、別に」
ぎゅっと俺の手を握ってくれる明。

俺が愛した男。俺が唯一許してる男。
明、全てが愛おしいよ。

「この雪さ、積もらないかなー?」
「無理だろ。都心だぜ?」
「はは、そうだな」
笑う明。デーモン何て、出て来なければ良いのにな。今だけ、今だけで良い。平和をくれ。俺と明だけの世界をくれ。
「なあサタンってさ、綺麗なのかな」
「突然どうした」
「いや、何となくさ。………雪みたいに綺麗なのかなって」
明らしい発言だな。だから可愛い。
「あ、けど、了程綺麗な人は居ないと思うよ」
「ありがとう………」
もっと明に寄り添って。人混みに紛れて、俺達は歩いていた。

そろそろ本気で風邪を引きかねないので、俺達はファミレスに入った。時間帯は午後7時ぐらいだから、丁度良いだろう。
「やっぱ室内はあったかいな〜」
席に座るなり、明がそう言って来た。
「あまり高いのは頼むなよ。そんなに持って来てないんだからな」
「大丈夫。俺そんなに食わないからさ。………アモン、だっけ。そいつが身体の中に居るからかな」
ああ、なるほど。それは便利で。
「とにかく、温かい飲み物が飲みたいから、ドリンクバー頼むか」
「ああ。確か、コーンスープがあった筈だ」
そんな他愛の無い会話。俺からしたら新鮮で。そう言えば、明とこうやってご飯とか食べに来た事何て無かったな………。

注文をし終わって。明がトイレに行った。俺は携帯を出して、ニュース一覧を見つめていた。特に目立ったニュースは無い。それにはほっとした。
トイレから明が戻って来て。明も携帯を出していた。
「なあ了。俺さ、普段普通に学校に行ってるけど、大丈夫かな……」
「多分、な」
「あ、了。今日お前の家に泊まっても良いか?」
まさか、明からのお誘い!?っとは浮かれていられない。俺は冷静に良いよと言った。
「何故?」
「まあ、色々と………」
同居人だから、か?まあ俺は大歓迎だ。俺の今の家には、誰も居ないからな。
店員が俺達の料理を運んで来た。それに目を輝かせる明。
「へへ、やったー」
嬉しそうだな。肉、好きだな。アモンのせいか………。

この時が、一番幸せだ。明の笑顔が見れて。

「了って、あんま食わないよなー」
「まあ、今日はな」
「俺デザートも頼むぜ」
コイツの食欲には、驚かされるよ………。


その後1時間ぐらい喋って。ファミレスを出て、冬の町を歩いた。
「止まないなー」
「………明」
俺は明の名前を呼んだ。
「うん?」
「………こっちに来てくれ」
俺は明を連れて、足早に町はずれの方、公園の方に向かった。

公園には人が少なくて、絶好のロケーションが見られるな。
明を公園の鉄格子の所へ連れて行った。
「うわー………」
夜の夜景を見て、言葉を失っていた。
「………お前に見せたかったんだ」
「了………」
俺も明の隣で、その景色を見つめていた。
「………明」
「了………」
俺達は互いを見つめていた。
俺は明の頬に触れて、じっと明の瞳を見つめていた。
「………りょ、了?」
「………帰ろう」
顔を限界まで近づけて、本当はキスをしたかったけれど、堪えた。
「行こう?」
俺は明の手を掴んで。
「あ、ああ」
俺はそれから、一度も明の方を見なかった。





明、頼むから俺の前から消えないでくれ。
何か、お前が目の前から消えそうな気がして、怖いんだ。

俺は絶対にお前から離れないし、お前を裏切らない。


だから――――――。


















END

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