デビルマン

□神に背く者
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それは、本当に突然だった。
学校帰りに俺はデーモンの姿を見た。美樹ちゃんを先に帰らせて。俺はその後を追った。

くそ!人通りが多い所に来やがって………!これじゃ迂闊に変身出来ない!デーモンは人込みを避けながらどんどん走っていた。俺はその後を追い掛ける事しか出来ない。
「?明」
「!了」
たまたま俺が走っていた目の前に了がいた。
「今何かが通った気がしたけど……」
「デーモンだ!」
その一言を聞いた了の瞳の色が変わった。二人でデーモンの後を追い掛けた。



デーモンは人込みから抜け出していて、住宅街の方へと走っていた。
「待て!」
曲がり角を曲がった所に、教会があった。辺りを見渡しても居ないので、多分そこの中に入ったのだろう。
「………入っても大丈夫かな」
「教会はどんな人間にもオープンだ。大丈夫だろう」
その教会の扉を開いて、俺達は中に入った。
日曜では無いので、信者は少ない。良かった、礼拝中でも無いから。オルガンを弾いている人と牧師しか居ない。………どちらかに化けているか、隠れているかの二種類だ。
「明」
了の小声が聞こえた。デーモンを見つけたらしく。了が指を指す方向に、デーモンは隠れていた。教会の椅子の下だ。どうする?一般人が居る前で殺すのか?しかも、聖なる場で。
「あの、何か御用ですか?」
教会の人と思われる老人が俺達に話しかけて来た。
「あ、えと………」
どうする………。迂闊にデーモンの事は話せない。俺が悩んでいると、その隙にデーモンは椅子の下から出ていて、牧師を食らっていた。
「!貴様」
俺は傍に置いてあった蝋燭を投げた。それがデーモンにあたり、デーモンの身体に火が付いた。俺はその隙に了が持っていたナイフを借りて、頭を切った。
幸いな事に、牧師は生きていた。良かった。オルガンを弾いていた人はとても怯えていた。そして、さっき俺達に質問して来た人もだ。
「あ、悪魔が教会に入って来るなんて………」
そりゃ、驚くよね。俺も驚いている。まさか悪魔が、デーモンが此処に入れるなんて。考えもしなかった。奴らは教会が嫌いと聞いていたから。
「………了。悪魔、デーモンは教会が嫌いなんじゃねぇのか?」
「……それは人間が勝手に決めた事じゃないのか?現に奴らは平気だ」
はぁー。………とにかく牧師を助けよう。オルガンを弾いていた人に牧師を任せて。俺は、せめてと思ってデーモンの後片付けをした。その時、目の前にあった十字架に目が行った。
「………誰だっけ」
「イエス・キリスト。人間の代わりに死んだ神の子さ」
ああ、そうだった。
「救世主、つまりメシアとして崇められていた人さ。人々は彼に期待をした。彼ならユダヤをローマの支配から解放してくれる救い主、と思っていたからだ。だが実際的な事はしなくて。彼の行った救いは、心の救いだった。人々はそれを知らずに殺してしまった。………人間とは哀れな生き物だな」
了は本当に物知りだよな。いつも思う。聞いていてすごい、と思う。
「………もしも彼のような男が現れたら、現代の人間はどう思うだろうか。この腐れ切った人間世界を、滅ぼしたいと思ってしまうのか」
「!それは無いだろう?だって、神の子なんだろ?」
「その神の子が殺されたんだぜ?人間の手によって。………もし俺が彼だったら、人間に復讐するさ。………デーモンとなって」
「了!」
「冗談さ」
ったく………。頼むからお前までデーモンになるなよ?それだけは嫌だ。………そうなったら、いつか戦わなくてはならない。
「………だがもし、本当に現れたらどうなるのか。楽しみだね」
「おいおい、………」
俺は、現れて欲しくない。………多分戦う事になる。俺と。俺が、勝てるのか?神に。神の子に。
「………お前なら勝てるよ、絶対に」
了………。
「神だろうとお前は負けない。お前は絶対勝つ。………信じてるぞ」
「………なら、それに答えられるように強くならなきゃな」
よし、デーモンの出した血は全部拭き取れたな。死骸は………。燃やそう。
「あの、ここに暖炉とかありますか?」
俺は先程から俺達を見ている老人に聞いた。
「あ、ありますよ。こちらです」
彼に案内された場所は、一階だった。そうか、ここの教会。一階はご飯とか食べたりする所で、二階が祈る場なのか。そこの暖炉に死骸を投げ入れて。
「………今日あった事は忘れます。信じたくもありません。悪魔が教会に入って来るなんて」
「……そうして下さい」
その老人は震えていた。まあ、そうだろうな。突然得体も知れない物が襲い掛かって来て。牧師を襲って。教会じゃ有り得ない事だもんな。
「……お茶でも飲んでいきますか?助けて頂いたのですから」
まあ、そう言う事なら。

俺と了はそこの椅子に座って。紅茶を貰っていた。後クッキーも。
「………牧師は、大丈夫ですか?」
「え、ええ。傷は浅かったので多分平気だと思います」
良かった。また犠牲者が増えたら、悲しいからな。
「………あの、お二人は一体」
………此処まで来たら、な。何て嘘を付こう。
「俺達は、悪魔とかを研究しているんです。そうしたら悪魔に憑りつかれた人がいつの間にかこの教会に逃げてしまって………。最後に言っていました。この人間はもう俺のものだ、と。だから殺したのです」
お、おおう。了の嘘には驚かされる。良くその場でそんな事を考え付くよな。
「そうでしたか………。それはお疲れ様です」
信じて貰えたのか。流石信者。

俺達はクッキーを食べて。紅茶を飲み干してその教会を出た。するともう日は暮れていて。夜になっていた。
「………全く。良くあんな嘘を」
「咄嗟の思い付きさ。それよりも明。………見ろ」
了が空に向かって指を指して来た。
「………月が、赤い」
「こんな事は滅多にない。大体起きる現象として挙げられるのは、花火をした際にその煙で月が赤く見える事ぐらいだ。………この月、嫌な気しかしないな」
「………」
つまり、デーモンが現れると。また戦いか。まあ、良いか。戦う事は楽しいからな。
「行くぞ。………血の匂いがする」
「ああ。あっと了。俺から離れるなよ」
「分かっているさ」

俺達は夜の闇に溶けた。デーモンを倒すために。
………もしも本当に救世主、メシアが現れたら、俺は………。















END

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